30. ガレージセール

先日、日本人の友達数人とガレージセールを行いました。ガレージセールというのは、文字通り自宅のガレージで物を売ること。家で好きな時にできる気軽さからか、アメリカではごく日常的に行われています。冬が厳しいここシカゴでは、5月から10月がシーズン。特に季節の良い5、6月の金曜と土曜は、あちこちで「GARAGESALE」の看板を目にします。

アメリカに来た当初は、私も興味本位でぶらりと立ち寄ったものですが、ちょっとしたカルチャーショックを受けた記憶があります(悲しいかな、今は慣れてしまったけど)。というのも、日本人の感覚からは想像できないようなもの、例えば使い古しのほ乳瓶とかシミだらけのテーブルクロスといった、がらくたに限りなく近いものを出品しているのです。捨て魔の私から見れば、そんな物をよくぞ今まで保管しておいたものだと感心するほどですが、見方を変えれば、物を大切にする国民性なのでしょう。実際そういうものを買って使っている人がいるのですから、これも立派なエコロジーですね。

数あるガレージセールの中でも「当たり」なのは、高級住宅街で行われるものと日本人が行うもの。日本人が開催するガレージセールは、総じて質が良くて安いのが特徴。駐在員の多くは、日本に帰国する際に家財を処分していくから、比較的新しい家電や家具、子供服、玩具などを格安で売り出すのです。それを知っている人たち(日本人だけでなく、アメリカ人やメキシコ人、中国人など)は、セールの広告を見るために日本食スーパーの掲示板に直行します。実際、日本人の私たちが行くのもほとんどが日本人のガレージセール。新品だと5000円もするミキハウスの子供靴を1ドルで買ったときはうれしかった〜!

さてさて、本題の私たちが開催したガレージセールのお話。4月下旬の金曜、土曜の2日間でしたが、あいにく両日とも小雨がぱらつく冬のような寒さでした。にもかかわらず、初日10時オープンの前から大盛況。というか、ガレージセールマニアにとっては、最初が肝心なのでしょうね。中には、ベンツで登場して家電をたくさん買ってくれたご婦人もいました。彼女曰く、「こうやって家財を節約したからいい車が買えたのよ!」。

私たちが出品したのは、多くは子供服や玩具。前者は25セント〜1ドル、後者も高くても5ドルくらい。食器や家電なども、状態がいいのに買った当初の10分の1〜20分の1の値段ですから、めっけものです。それなのに、「もっとディスカウントして」とは一体どういうことでしょう。テンションの高い人たちに早口の英語でまくし立てられると根負けしてしまうのも日本人の特長で、みんなそれを知っていてわざと言ってくるのかもしれません。

まあ、そういう不具合は多少はあるものの、ガレージセール自体は楽しいものでしたから、また機会があったらやりたいと思っています。家のクローゼットが片づくのも、気持ちのいいものですしね。

それはそうと、友達から「ESTATE SALE(遺産セール)」というものがあると聞きました。例えば一人暮らしの人が亡くなった時、遺族が専門の業者を通して、その人の家財すべてを売るというもの。たまたまそこに出くわした友達は、年代物のシンガーミシンを格安で買ったと喜んでいました。見る人が見れば、そのミシンはアンティーク品として高額で売買されるのがわかったはずですが、値段を付けた人には役目を終えた古ミシンとしか思えなかったのでしょう。そういえば、名画や骨董品も、時折蚤の市などで格安で売られていることがあると聞きます。

人によって物の価値観は違います。自分には不必要でも他の人にとっては宝物になるかもしれません。いらなくなるとすぐに処分してしまう人が多い日本で、ガレージセールが普及したらどんなにすばらしいだろう。私が日本に帰国して一戸建てに住むことができたら是非やるつもりですが、その前にどなたかやってみませんか?

2004年6月

■写真は2004年4月ガレージセールにて