27. アニメ&コミック人気

「千と千尋の神隠し」、ついにやりましたね。3月23日に行われた米アカデミー賞授賞式で、長編アニメーション賞を受賞しました。宮崎駿監督は、「こういう時期だけに、素直に喜べない」と言っていましたが、この快挙は、間違いなく日本アニメ界の今後を左右する大事件。日本では、相当盛り上がったことでしょう。ちなみに、作品賞には私が住む街、ヴィクが活躍する街シカゴが舞台の「CHICAGO」が選ばれましたが、「千と千尋」の陰に隠れてあまり話題に上りませんね。いつもエリート役ばかり演じてきた私のごひいき俳優、リチャード・ギアのコミカルな姿が見られますよ。是非ご覧あれ!

みなさんご存じのように、日本のアニメはすでにアメリカに浸透しています。以前のシカゴ便りでも書きましたが、4年前にはポケモンの大ブーム。アニメ専門TVチャンネルでは、ポケモンの他、「ドラゴンボールZ」、「幽☆遊☆白書」、「遊☆戯☆王」など多数放映されています。「日本的なユーモアが果たしてアメリカ人に理解できるのか?」、いつも不思議に思っていましたが、「Spirited Away」(「千と千尋の神隠し」の英タイトル)を実際に観に行った時の様子と、その作品がオスカーを受賞したことを考えれば、その答えは「Yes」なのでしょう。私が観た時には、席は満室で立ち見も出たほど。始終笑いが絶えませんでした。特に、千が壁からはがれ落ちる長い階段を大急ぎで走っていくところなどは、大笑い。ただ、是非聞いてもらいたかったエンディング曲にはみんなそっちのけで、感じ方に少し差があるようにも思えました。それはともかく、最大上映館数151だったのが一気に800にまで増えるそうで、この先ますますファンが増えていくことは間違いありません。

アニメだけでなく、コミックも元気。昨年10月には日本のコミック誌「ライジンコミックス」とアニメ情報誌「ニュータイプ」が創刊。11月には少年ジャンプの英語版が相次いで創刊されました。月刊の「ショーネンジャンプ」は、初版で25万部を完売。ストーリーと画が凝っていて読み応えがあること、今まで左開きだったのを日本と同じく右開きにしたことが逆にウケたようです。表紙には「こちらが表です」、中身にも所々「右から左に読んでください」と矢印まで書かれていて、なかなか工夫してあります。

ところで、せっかく日本のコミック誌が創刊されても、なかなか手に入らないのが悲しいところ。それは日本のものだからとか新刊だからなのではなく、コミック自体アメリカの本屋にもスーパーにも、もちろんコンビニにも置いていないのです。そういえば、コミックを読んでいる人すら見たことがない。だから、欲しいと思えばコミック専門店に出向くか、通販しか手はありません。幸いシカゴには「Chicago Comics」という専門店があるというので、早速行って雑誌を手に入れ、ついでに話を聞いてきました。

店長のアレックスさん(右の写真)によると、約800タイトルを扱っていて、うち約250タイトルは日本のコミックなのだそう。あまり期待もせずに行った店で、こんなにたくさんのコミックに出会えたのは正直びっくり。「スパイダーマン」、「バッドマン」、「スーパーマン」はもちろん、見たこともないコミックであふれていました。そして、「MANGA」コーナーには日本のコミックがずらり。「鉄腕アトム」から「セーラームーン」まで、ガンダムのフィギアもあります。アレックスさん曰く、「日本のコミックはストーリーが新鮮で、年々人気が出ている」とか。ただ、コミックの市場自体、アメリカのそれは日本とは比べものにならないほど小さいので、一般への浸透にはまだまだ時間がかかりそう。「発行部数が少ないからコミックの単価も高くて、30ページで3〜4ドルはしてしまいます。そうなると子供の小遣いでは買えないし、頑張って買ってもすぐに読み終えてしまう。だからテレビゲームに走ってしまうんですね」(アレックスさん)。そういう意味では、「ショーネンジャンプ」が288ページで4・95ドル、年間購読だと送料込みで29・95ドルは良心的で、子供のファンを増やすチャンスではないでしょうか。

アニメやコミックをバカにしている人は、日本でもまだまだたくさんいます。確かに子供には絶対見せたくないなと思うものもありますが、「ビッグコミック」愛読者の私から言わせると、その辺の情報誌やハウツー本より為になるものも多くあります。いまいち元気がない日本を奮い立たせて欲しい。最近の日本アニメ&コミック人気の波にうまく乗れるか、これからが勝負でしょう。楽しみにしています。

2003年5月