24. アメリカの方言

しばらくお休みしていた英語学校に、この秋から復帰しました。1年半も学校から遠ざかっていたのに加えて、今回履修したコースが難しすぎてとてもついていけません。でも、授業の内容自体はおもしろい!話の一割しか理解できないのにそう感じるのですから、ネイティブにとっては相当楽しい授業なのでしょう。日本語で受けられたらどんなにいいか…。

以前シカゴだよりで紹介したのは、ESL(英語を母国語としない人のための英語学習)でした。上達したかは別として、長くESLにいたのでコースを終了していまい、今回はレギュラーコースを取ることになりました。つまり、アメリカ人の若い学生に混じって、心理学とかマーケティングなど自分の専攻を勉強するわけです。実は前にも一度レギュラーコースの中の「Health」を取ったことがありましたが、結果は散々でした。四十人近くいる生徒のうち海外出身者は私だけで歳も一番上。早口のスラングが飛び交い、授業は全くわからない。テストを受けても問題が理解できないから答えられないという、悲惨な状況だったのです。今回はこんなことにはならないようESL教師にも相談し、「Language & Culture」を選択。文字通り言語と文化を学ぶコースなので、海外出身者大歓迎で、肩身の狭い思いをすることはありません。生徒もそういうコースを取るくらいなので、親が移民だったり外国人コミュニティーで育った経験ありと、異文化に理解がある人ばかりなのもホッとします。

さて授業の内容ですが、テキストを中心に、「バイリンガル教育」「子供はどのようにして言葉を覚えるか」「英語の方言」「ブラック・イングリッシュ」「女性の言葉・男性の言葉」などを勉強します。中でも興味深いのは、先週からテーマになっている英語の方言について。日本もそうであるようにアメリカにも方言があって、話しているとどこの出身かわかるそうです。もし海外出身者でこの違いがわかるのなら、その人は骨の髄までアメリカ人と言ってもいいでしょう。残念ながら私には詳しい違いはわかりませんが、ブリティッシュ・イングリッシュ(can'tをカントと発音するなど、発音が強くて区切りが多い。イギリス人にとってはアメリカ英語が訛っているのでしょうが)と、ブラック・イングリッシュ(ラップ調の話し方)は、私にとっては聞いていて違和感があります。イギリス出身の俳優、ユアン・マグレガーやヒュー・グラント、ジュード・ローなどは、アメリカ人を演じるために話し方を変えているはずですが、完璧なアメリカ英語なのでしょうか。先生に質問してみたら、ところどころ違うそう。ヒュー・グラントがイギリス出身の役をよくやるのは、やはりそういう理由もあるのでしょうか。

アメリカの中では、南部英語はかなり訛っているといいます。仕事で南部に行く機会の多いダンナは、何度聞いても理解できない言葉があって、よく綴りを聞くと言っています。でも、南部の人に言わせると、北部は早口で何を言っているのかわからないとか。一般的にニューヨークやロサンゼルス、シカゴなどの都会は標準語に近いようです。ただ、微妙に違いがあって、ボストン出身のジョン・F・ケネディは、キューバのことを「キューバァ〜」と発音していたそう。彼のモノマネをする時には欠かせない言葉なのだそうです。シカゴに住んでいると、「訛りが少なくて良かったね」と言われますが、もちろんここにもあります。Chicagoのことを「シィカァ〜〜〜ゴゥ〜」と、妙に「ca」を強調するのです。今度シカゴが舞台のテレビドラマ「ER」を見る時には、注意してみてください。

その他、物の呼び方も土地によって異なります。炭酸飲料のことを「soda」と言いますが、シカゴを含めた東部で「pop」(ポンポンはじけるから?)、南部では銘柄に関係なく「coke」と言うそうです。

スタンダードな英語もろくに話せないのに、方言を勉強するなんて百年早いかな。でも、ただやみくもに英語を学ぶよりも何倍も楽しいですよね。映画を見ていて「おいおい、その発音は違うぞ!」なんて、揚げ足を取ってみたい。英語習得の最終目標がこれって、変ですか?

2002年9月