23. W杯、アメリカでは…

W杯、4年に一度のお祭りもとうとう終わってしまいましたね。韓国では気が抜けて仕事が手につかないなど、経済にも支障が出ているようですが、さて日本はどうでしょう。

もちろん私も、シカゴから応援していましたよ。日本戦はいつも夜中の中継でしたが、ダンナと2人で大盛り上がりでした。でも、この興奮をみんなと共有したかった。国中がこんなに盛り上がったことって久しぶりでしょう? 日本のニュースで、道頓堀に900人以上が飛び込んだとか、仕事を一時中断して社員全員で試合観戦したなどという話を聞くたびに、私もその中の一人になりたかったと悔やむのです。というのも、アメリカではW杯に対する関心があまりにも低すぎて、私たちだけが勝手に盛り上がっている内輪受けだったから。FIFAランク15位は日本よりはるかに上だし、実際72年ぶりにベスト8に進出したんですよ。なのに、試合翌日のスポーツニュースのトップはバスケットか野球。全国紙USAトゥディの世論調査では、W杯に「それほど関心がない」、「全く関心がない」を合わせると74%でした。仕事で会ったアメリカ人ビジネスマンとW杯の話をしたというダンナは、「信じられないことに、今やってることすら知らない人がいた」と飽きれ顔。スポーツ観戦が人気のアメリカで、なぜサッカーは根付かないのでしょうか。理由は色々あるでしょうが、サッカー競技の性質上点数が入りにくいというのが、どうもアメリカ人気質(過程よりも結果重視。展開が早くたくさんゴールを決めて、ワイワイ盛り上がるのが好き)に合わないようです。

そういえば、アメリカで人気なのは点数がたくさん入るスポーツばかり。四大スポーツと言われる野球、アメリカンフットボール、バスケット、アイスホッケーなんてまさにそうですね。特にシカゴは、ファンが熱い! ご存知、ヴィクのごひいきカブスの他に、ホワイトソックス、バスケのブルズ、アイスホッケーのブラックホークス、アメフトのベアーズがシカゴに本拠地を構えていることもあって、いたるところで「C」(CHICAGO)のロゴが入ったキャップやTシャツを目にします。スポーツバーも大盛況。マイケル・ジョーダンがいた頃のようにスーパーチームがあるわけではないけれど、シカゴのファンにはそんなことはあまり関係がないといった感じ。約100年ワールドチャンピオンから見放されているのに連日満員のカブス戦を見るたびに、関西のどこかのチームを思い出さずにはいられません(失礼!今年は違いますね)。

さて、話はサッカーに戻って…。アメリカではサッカー不毛の地といわれている割に、プロサッカーの歴史は意外に古く、1968年に発足した北米リーグ(NASL)は相当盛り上がったようです。が、ペレなど外国人スター選手ばかりを集めたために自国の若手選手が育たず、選手の年俸高騰も運営を圧迫して、84年に解散してしまいました。サッカーが再び注目を浴びるようになったのは、94年にアメリカでW杯が開催されてから。96年にはメジャーリーグサッカー(MLS)もスタート。観客確保のために試行錯誤したらしく、得点が入りやすいようにとゴールを大きくするなどの独自ルールも作ったようですが、今はFIFAルールに戻っています。今回初めて知ったのですが、実はシカゴにもシカゴ・ファイヤーという立派なチームがあって、W杯でもジョシュ・ウォルフ選手とダマーカス・ビーズリー選手がアメリカ代表として活躍しました。

さらにさらに、驚くなかれ。なんとアメリカには女子プロサッカーリーグもあるのです。ご存知でした? しかもレベルが高く、過去3回行われた女子W杯でもうち2回優勝しています。何をかくそう、アメリカの女性の間ではサッカーは花形スポーツで、サッカー人口の4割は女性なのです。確かに大きな身体から放たれるパスは威力がありそう。プロチーム、アトランタ・ビートには日本人の澤穂希(さわ・ほまれ)選手も活躍しているというから、親近感が沸いてきます。

少年サッカーもここ数年大人気だというし、何より今回のW杯の好成績を見ると、ひょっとしたら、アメリカサッカーがブレイクする日も近いのではと期待してしまいます。4年後のドイツ大会での国民の反応が楽しみ。ガンバレアメリカ! もちろんがんばれニッポン!

2002年7月