14. 食文化の違い・乳製品編

狭い日本の中でさえ食文化の違いにびっくりさせられるのだから、海外ならなおさら。それでもアメリカはまだいい方。ハンバーガー、チキンウィング、スペアリブのアメリカ食はこってりで大味だけど日本人には馴染みがある。それにこれに飽きても、最近はどこのスーパーにも、アメリカ産で味がちょっと違うけどしょうゆも日本酒も、アボガド入りだけど巻き寿しだって売ってる。そう思って2年がたちます。が、やっぱり私は日本人。今もって口に合わなかったり、逆にこんなおいしいものがアメリカにあったのか!と驚くこともしばしばです。そんなわけでこれから時々、アメリカと日本の食文化の違いについてお伝えしていこうと思います。今回第一弾は乳製品編――。

“食”ってほんとに大事なことなんだなぁと、最近つくづく感じます。日本で当たり前のように食べていたものが食べられなくなるって、どんなにつらいことか! 最近2年ぶりに日本に帰って、お寿司やお刺身よりも、まず納豆ご飯や卵ご飯(アメリカではサルモネラ菌の影響で生卵が食べられないのです)、キャベツの千切り(甘くておいしい!!)といったどうってこともない食べ物に涙が出るくらい感動した自分を見て、本当に日本食に飢えてたんだと実感しました。毎食がご馳走でしたもん。

中でも一番の感動ものは乳製品。特に牛乳とヨーグルト。牛乳があんなに甘くてコクがあるなんて知らなかった。それこそ毎日水代わりに飲んでいました。えっ? アメリカの牛乳って日本と違うの? そう思うでしょう。そうなんです。低脂肪乳しかないのです。スーパーに行くと、ものすごく大きな牛乳パック(基本は1ガロン、3.8リットルか、ハーフガロン)が種類も豊富に陳列されていますが、どこを探しても日本の3.5牛乳なんてものはありません。一番脂肪分が多いスタンダードタイプでも3.2%くらい。たかが0.3%の違いだと思うかもしれませんが、飲んでみると味のない水で薄めたような牛乳でしかありません。しかもこのタイプにはほとんどに、カルシウムの吸収を助けるからとビタミンDが含まれているし、賞味期限はゆうに2週間以上ある。一体どんな加工がしてあるのかと疑いたくなります。

で、次にアメリカでは一番多く飲まれているという2%脂肪乳、そして1%脂肪乳、ノンファット乳。これらがどんな味かは言わずもがなです。そのほか、豆乳やオーがニック乳など種類はいろいろあるのですが、どれも基本的にこれら4タイプの脂肪分のいずれかで、日本人好みの牛乳にはお目にかかれません。

ヨーグルトにいたっては、さらにすごいことに。ノンファットが主流で低脂肪タイプが少々。ノーマルタイプは皆無です。かといってカロリーは低くない。というのもどれもフレーバーつきで、甘〜いジャムがぎっしり。しかも完全にミックスされてるから取り除けない。例えばブルーベリー味だったら真紫色で必要以上に甘くコクがない、とてもヨーグルトとは思えない代物です。アロエヨーグルトが欲しいなんて言わないから、せめてプレーンタイプだけでも置いてくれ。そう願うばかりです。

それにしても、どうしてアメリカ人はそこまで低脂肪にこだわるのか。乳製品以外でもクッキー(オレオにも低脂肪タイプがある)、ポップコーン、パスタ、ハムと数えたら切りがないくらいいろんな低脂肪ものがあります。低脂肪と並んで低カロリー食品、低コレステロール、低糖、減塩ものも日本以上に豊富です。アメリカでは半数以上の人が肥満で悩まされているというから、こういった食べ物が人気なのはわかるのですが、でもその前においしくなくっちゃ意味無いでしょ、食べる量を減らせば脂肪分だって減るんだよ。そう声を大にして言いたいのですが、それはやはり食文化の違いで仕方のないことなのでしょう。ダイエットコークを1日6缶飲むという知り合いの話を聞いて、そう思わざるをえなくなりました。コーラは日本のお茶みたいなものなんですからね、きっと。やめろというのに無理がある。

そんな諦めモードの中、先日、「異国の食にケチをつけても始まらない、だから自分で工夫する」そんなポジティブな考えの方から、とってもいい情報を入手しました。「18%脂肪乳っていうホイップ用のがあるから、それと低脂肪乳を混ぜると日本の牛乳みたいになるよ」。早速試してみたら、ほんとコクがあって甘い日本の牛乳そのもの。これには感動しましたよ〜。「必要は発明の母」とはよく言ったもの。素敵な奥さん的な発想が嫌いな私も、こういった異国での生活の知恵にはただただ脱帽するばかりです。そう考えると、案外食文化の違いを体験するのはおもしろいことかもしれませんね。

2001年4月