3. ブルース・エディー

初めてエディーに会ったというか、エディーを見たのはシカゴのLOOP(ダウンタウン)の南に位 置するライブハウス“HOT HOUSE”だった。 ぼんやりした様子とホームレス特有の匂いに、変な人がまぎれこんできたな…程度に思い、“Hi!”とあいさつされても、適当にあしらっていた。

それにしても、この、寒いという言葉では言い表せないほどのシカゴのこの時期、ホームレス達はどこで生活しているのだろう。確かに地下鉄は24時間動いていて、車内で寝ている人も見かけるが、その数はアメリカの他の大都市よりもはるかに少ない。
 気温が下がりすぎて小学校などが休みになるというニュースを見ていたとき、ホームレスの人はここに来てください、というインフォメーションが流れていたので、案外シカゴなど寒いところは、そういう施設が充実しているのかもしれないなと思った。

ライブが始まり、エディーは客や店の人に話しかけたりして、そのうちセキュリティーに追い出されるんだろうとぼんやりみてると、どうも会話がはずんでいるようだ。シカゴの人はやさしいんだなと思いつつ、数日後、違うライブハウスでもエディーに会った。
 その後、ブルース系のライブでは、必ずといっていいほどエディーに会っている。4,5回目に会ったとき、店のバーテンダーに“エディーって何者?”と聞いてみた。“ただのブルース好きのホームレス”と彼。
 ホームレスといえば、街なかの人通りの多いところで、よく“ストリートワイズ”という情報誌を売っている。どうもホームレスや支援団体が運営しているらしい。内容は、イベントを始め、広告、読み物もわりあいに載っている。それを通 りかかる人に売っているのだ。VICの最新号、“HARD TIME”でもVICの事務所の前でいつもストリートワイズを売っているホームレスがいて、VICは気が向くと買ってあげたりしている。
 どうも、最近わかってきたのだが、エディーはシカゴでのブルースのライブには、どこで調べてくるのか、ほとんど顔をだしているらしい。しかも、どこの店でも顔パスで入場できるらしいのだ。ひとなつっこくて、愛きょうがあって、あぁ本当にブルースという音楽が好きなんだなと、エディーのことは憎めないのだが、話しだすと、とことん付き合いたがるのでみんな、少し距離を置いてエディーと接している。

今日のライブは野毛洋子さん率いる、“JAZZ ME BLUES”。トロンボーンは、あのカウント・ベイシーと演奏していた、ジョン・ワトソンだ。もう、70歳に近いらしいのだが、なかなか、セクシーでチャーミングなじじいである。もちろん、エディーもやってきた。あれ、今日のエディーはなんか、違うぞ! 髪もとかしているし、おニューのジーンズまではいている!! エディーに何があったんだろう。でも、答えはすぐに推測できた。簡単なことである。
 それはね、大好きな野毛洋子さんのためにおしゃれをしてきたんだよ。だって、今日は、“SWEET VALENTINE'S DAY”なのだから…。

吉野八英 / Yae Yoshino 2000年2月