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「ハード・タイム」を読んで

一人で女が年を重ねる勇気

chissarossa

 おそーいご報告ですが、『ハード・タイム』気持ちよかったです。
 前の作品には将来の見通しを持ちたいという焦りからくる陰が常に感じられて…まあ、それは人間ヴィクを見るには良かったし、現実的でホッとするし、共に歩む等身大の勇気づけって感じでしたが、今回は初心に帰ると言っていいほど、吹っ切れていて、力強かったです。
 『サマータイム・ブルース』のように、夢のようなお手本っていうリード観が感じられます。気分爽快! 題材は重いものでしたが、社会的な歪みを指摘して、ただの探偵モノという枠を超えたことはモチベーションの力強さが出てきて、これから先の作品展開も大きな期待が持てます。このように、時代を表すことは作品の濃度や価値として、とても大事だと思うのです。
 それに、ヘンなところがいつも気になっていたのですが、ヴィクって、何かとすぐ吐くでしょ。あまりにも多くて、なんか、しらけちゃうところでもあったのですが……今回はその場面でも違和感がありませんでした。よかったー。
 ニコラの背景を、もう少し突っ込んで描いて欲しかったですが、今日本で起こっている訳の解らない“みんなで全てにヒステリー”はアメリカも同じで、是は地球規模でのことなのだと理解できる。
 “ある日突然理不尽な脅威にさらされる”という危険性は長い文章で、だらだらするどころか緊迫感があり、とてもよく書けていて、この効果のために“この文章量”なのだとは納得できるものでした。
また、勇気を貰いましたね。一人で女が年を重ねる勇気…です。一人は自由で楽だけれど、きびしくて、怖いから。でも、なんとかなるさ! ってね。
 『ハード・タイム』を読んで、さらに生意気に拍車がかかったchissarossaです。


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