VIC FAN CLUB
ESSAY

 

若狭だより 30

棚からボタモチ

上村 縁

 彼を両親や妹に紹介したとき、特に妹なんかは経過を知っていたので「なんで今年の正月にメル友から始まって、3月に久しぶりに会っただけなのに、よくそういう決心がつくな。ま、あんたらしいといえばあんたらしいけど」両親も私にそんな気配が微塵もなかっただけに「寝耳に水」状態だったのですが。おかげで何も相談してくれなかったと、つまづいているのですが、このスピード決済を知れば、もっと強く反対することでしょう。「子供達もいるのに一時の感情でつっぱしって」と。けれどこれは彼には久しぶりに会った時に告白済みなのですが、ずーっと少しずつためてきた気持ちでもあるのです。
 彼とは大学時代の友人でした。前のダンナも共通の友人でした。クラスもゼミも一緒やったし。けっこう仲良かったんですよ。というより私がよくからかわれてた。すぐ、ムキになって反応がかえってくるのが楽しかったらしく。つまりまだその頃は彼にとっては私は「オコチャマ」で私にとっては「へんなヤツ」だったのです。おまけに私はどっちかっていうと、いるだけで「オトコ」ってぇ人は苦手なんです。オコチャマだから。前のダンナは(きっと本人は否定するでしょうが)やや女々しげなとこがあったし、今までの私のお気に入りのタイプをみても、かわいいタイプか、雰囲気から「オトコ」くさい人はいません。そんで4年間私の中では彼が「トモダチ」の枠を超えてくることはなかったのです。けれども、卒業認定があった日、この後は卒業式だけだけだからみんなで集まったのです。その時彼からしてもらった思いもかけない事(彼にとっては当たり前の事らしいですが)に目からウロコが落ちるような思いで、あらオトコの人ってこういうもんなのかなと。コペルニクス的展開とはこの事だったのですが、自分でもその時は、芽生えた感情に気付かず、そのまま卒業して別れたのです。(彼は東京、私は大阪)
 そして私は元ダンナと別れることになりました。すっごい落ち込んだりもしたけれど、その時不謹慎にもあの日の記憶がぶわぁ〜っと、ひろがってきたのです。おまけに学生時代のひとつ、ひとつの思い出までが頭のなかに湧いてきたのです。あれまあ、これはいったい何? それを確かめたくて、すっごく会いたいなぁと思ったのですが、その時彼は33才。私に子供が2人いるように、彼だったら幸せな結婚をして奥さんと子供を大切にしてるんだろうなぁ。ということが容易に予測できました。それで今わたしはそれを見て、起きあがれるのか? と思いました。私は子供のためにへこんだままでいることは許されなかったし、そうするつもりもありませんでした。そこで、もうちょっと自分に自信がついて元気になったら連絡してみようと、確かめるのはそれからと、かたく決意したのです。
 子供達のおかげで、落ち込むこともなく、日々はすぎていきました。そして去年の事です。りんの用事で東京につきそって行くことになりました。用事がすんで帰りのバスまでの時間どこに行きたいかりんに聞くと「都会ってとこに行きたい」だったので、では表参道から青山通りをぶらつこうかと、いうことになりました。「青山」それは彼の実家のあるところでした。私の「会いたいモード」は最高潮ではあったのですが、『いくら友達とはいえ、出戻りのもう15年も会ってない人から「会いたい」って連絡きても奥さんいやがるやろうし、だいたい結婚してたら実家にはおらんやろ。そうや、年賀状出してみよ。実家に。うまくいけば転送してくれるかも。』というより直接行って、直接断られるのがこわかっただけなのですが。それが4月の事でした。気の長い話でしょ。
 それから年賀状を出し、2日にメールボックスを開けた時の感動!! おまけにまだ独り身だというではありませんか!! パソコンの前で小躍りしたのはいうまでもありません。
 だいたい、ただの友達って思ってたら6時間もかけて車を運転して会いに行きませんって。いくら子連れとはいえ。そんなクソ根性だせるのは、それ以上の感情につき動かされてるから。と自分ではわかってましたが、彼は全く気付いていなかったのです。でも、15年分正確には離婚してからの5年分の思いは、とどまるところをしりませんでした。結局、私の寄り切り勝ち。今でも「ゆかちゃんにはめられたよなぁ」とよく言われますが、結果オーライ。口では「先に手を出したのは、じゅうごくんでしょう!」と一応反論しておりますが、ほんまの事です。
 いやいや、ほんまにこんないい人が残っててくれたのは本当にラッキーでした。私にとっても、子供達にとっても。でも自ら行動をおこさなかったら、この「棚のボタモチ」は腐って二度と食べられなくなってたかと思うと、「思いのままにつっぱしる」私の行動原理も悪くないなぁ。と反省無しの日々であります。
 とにもかくにも、私達は始まったばかりです。まだまだ幾多の困難を乗り越えなければならないのでしょうが、子供達も彼も一緒なので、なんとかなるでしょう。(やっぱり反省無し)で、秋からは大町に移るのですが、標題どうしましょうかねぇ? 考えとこうっと。(やっぱり勝手に自分で予定している。反省無し!)
 どうも、ながながとすいません。自分の気持ちの整理をつけたかったので。お付き合いしていただきました。では、これからもよろしくお願いします。

2002年6月

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