VIC FAN CLUB
ESSAY

 

若狭だより 22

春と共に来たりぬ

上村 縁

へっかん。ご存じですか? これはある虫の呼称なのですが、場所、年代によっても呼び名は変化するらしく「おがむし」や「へぇこき虫」とも呼ばれています。その正体はカメムシの仲間なのですが、正式名称は「クサギカメムシ」というらしいです。(HPでカメムシを検索して名前を見つけた。初めて知ったわ)
夏には、その姿を見かけることはまずないのですが、ドンドン寒くなってきて、小春日和な日になると、目に付き始めます。そして冬の間は、フイに思い出したような頃に、ブーンブーンブーンカツッと、暖房が入って暖かくなった部屋を飛び回り、どこかにあたって落ちています。落ちてる(床を這っている)時、気づかずに触れようものなら、たいへんです。もわぁーんと強烈な異臭がたちのぼってきます。そう、彼らの攻撃というか守りの手段は、くっさい分泌液を排出することなのです。そのくささは強烈という表現しかないほど強烈なニオイで、消臭剤なんかじゃ全く歯が立ちません。手などについたときも、せっけんでゴシゴシ洗っても、全然おちず、ひどいことに、せっけんの香りとその異臭がまざって、この世にこんなニオイがぁっっと叫びたくなるほどです。
で、冬が終わりを告げ始め、だんだん暖かい日が続いてくると、わくのです。出てくるなんてナマやさしいものではありません。わくのです。ゴソゴソ、ブーンブーンと。冬などは固まって越冬しているらしいので、たまたまその姿に出くわした時は、すっごく気持ち悪いそうです。幸いにも私はまだ遭遇したことはありませんが。暖かくなってわいてくる様子は、「やぁ、見つかっちゃったなぁ。おひさしぶり」てな感じで、窓に! カーテンに! 机に! 干してある洗濯物に! ひっついているのです。ぽつぽつと。すごいケースでは、寝ころんだ時もわぁーんとクサイので、あっちこっち探すと、今、自分の頭でへっかんをやっちゃった事(ヤツらは末期にも汁を出す)に気づき、そのニオイのため寝付かれず、眠ることができたとしても、うなされるそうです。
私が受けた最大の被害は、朝着替えの最中の事です。靴下をはき、立ち上がったら、異物感を感じたので、「お、ゴミ入っとったんか?」と思ったとたん、むもわぁーん。と異臭があたりをたちこめ、その靴下を脱いでも、足にそのニオイはまる1日中残ってるし、おまけにその靴下は1回洗濯しただけでは、ニオイが取れなかったのです。
そんなにひどいんなら、駆除すればとおっしゃるかも知れませんが、それが、これ! という画期的な方法がないんですよねぇ。なんせ殺しゃクサイし、それに市販の殺虫剤でも死なないし。聞いたところによると、ビンまたは缶(ふたのしめられるもの)に灯油を少量いれておいて、その中に落としておけば、クサクならないらしいですが、うちにはおっちょこちょいだらけなので、へっかん漬けをいつひっくり返すかわからないので、それはいただけません。今のところは、地道にガムテープ封じ込め作戦(1匹1匹ガムテープに貼り付けて封じ込める)を遂行しています。
もし、画期的な方法があったら、教えて下さい。事務所のみんなとも言っていたのですが、裏技に出ぇへんかなぁ。トップ賞ものなんやけど。

2001年3月

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