VIC FAN CLUB
ESSAY

 

若狭だより 16

じんた逃げる!

上村 縁


 今日はとても、いい天気ですね。こちらでも、春の陽気が心地いいです。
 おとついは、すごかったです。風はゴウゴウうなってるし、アラレはぱらつくし、寒いし。まだ冬なんか? と思っておりました。昨日もけっこう、風がうなってはいましたが、雨は降っていなかったので、前日さぼった後ろめたさもあり、犬達の散歩に行くことにしました。
 案の定、2匹は大喜び。グイグイひっぱっていきます。ホームズのほうは、呼べば必ず戻ってくるし、まわりはたんぼで、人通りは皆無なので、いつもはなしてやります。確か、散歩に行かなかったのは、1日だけだったというのに、ホームズははなしてもらったとたん、無茶苦茶うれしそうに、駆けて行きました。たんぼをグルグル走り回り、すっごくうれしそうでした。私とじんたは相変わらず、ぽつぽつ歩いておりました。ふと後ろを見ると、ホームズが全速力でこちらに向かってきました。まるで、私とじんたをつなぐ散歩ひもがゴールテープであるかのように。“危ないやん”と思ったのもつかの間。ホームズの全速力アタックにかかっては、ひとたまりもありません。私はたんぼに落ちるのを無意識に避け、ひもに負荷がかかったとたん離してしまいました。
 その一瞬のスキをねらって、じんたは全力疾走しはじめました。それを追ってホームズもやったー、てな感じでついて全力疾走。ポツンと残される私。おりしも、天気は急変し、アラレはふってくる始末。
 “ホームズー!!”と呼ぶと、ハッとわれにかえったホームズは、すんごくバツが悪そうな顔でトボトボ戻ってきました。まず、ホームズを確保し、ひもにつなぎ、じんたを追いかけました。逃げるといつもなのですが、追いつきそうになると、こちらを、伺うように走っていきます。笑いながら(いつも私にはそう見える)。私は無駄な体力は使いたくなかったので、徒歩で追跡することにしました。ラッキーにも、周りはなんにもないので、見通しはいいし、追跡にはもってこいです。それに、私の頭の中には、ご近所犬地図も入っているし。全ては私に有利です。
 おかげさまで、よそのお宅の犬と格闘寸前のところを取り押さえることができ、じんたは無事確保できました。結局、いつもより、3倍は歩かされた私。くっそー!じんため!じんため!とムッとしましたが、あまりにも2匹がシュンとして、おとなしくいうことをきくので、気持ちが落ち着いてきました。それに健康な私は、アラレにふられても風邪もひいていない様子だし。
 と、春の嵐の中の捕物帖でした。が、案の定、次の日は筋肉痛になやまされました。

2000年3月

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