VIC FAN CLUB
ESSAY

 

若狭だより 13

がんくつ王を探して

上村 縁


 最近、うちのりん(姉娘・小2)の読む本が、高度化してきたので、つまり薄い絵本から、字のほうが多い、本に変わってきたので、いままでは図書館でも好きな本を選ばせていたのですが、最近は老婆心から茶々を入れるようになってしまいました。子供としては、“おしゃれな魔女こシリーズ”等、最近の読み物を選ぶのですが、私はやっぱ、名作全集でしょう。と、必ず1冊はおかぁさんの選んだやつを借りちゃいます。

 で、この夏BSで“厳窟王”(ジェラール・ドパリュデュー主演)をやっていたので、確か私も小2の時、本屋でみつけた”がんくつ王”を読んで、むっちゃ感動したことを思いだしました。(そのドラマは原作と最後がめちゃくちゃ違ってて少し興ざめでした。)で、私はちょうどその頃、りんの誕生日も近いし、この本は買ってあげねば!! と思い立ち、大阪へ行った時、でかい本屋でさがしました。が、ありません。だいたい名作シリーズ自体のスペースも小さいのです。“三銃士”はあるのですが、“がんくつ王”がないのです。もしかしてと思い、“モンテ・クリスト伯”も探しましたが、やっぱりありません。その日は、りんに本を1冊買って上げる約束をしていたので、協議の結果“足ながおじさん”を購入しました。結構本人はそれを楽しんでくれたので、よかったのですが、どうも納得いかない私は、小浜へ帰ってさっそくいきつけの県立図書館・嶺南支部へと行きました。そこにはあったのですが、高学年用なので、勧められません。これは、大きくなるまで待つしかないんか?とあきらめ、“小公女”や“長くつしたのピッピ”やらをおかぁさん推薦として、借りていました。

 先月のことです。おかぁさん推薦分として、“あぁ無情”を借りてやりました。するとちっとも、進んでいない様子。「どねしたん?(注:小浜弁)」と聞くと、「これ全然つまらん」と言うので、パラパラとめくってみると、ジャン・バルジャンがパン屋に盗みに入るとことか、神父様の銀の燭台を盗むとことかがなくて、いきなり大人のコゼットが、爺さんのジャン・バルジャンと暮らしているのです。おかしい!! これもその昔、“がんくつ王”を読み終え、次の本を物色する私に母が「この本、えぇで。おかぁさん小学校の時この映画みたけど、無茶苦茶怖くて晩ねれんかったもん。」と、今考えてみれば、ビビってもう買わんと言うはずであろう、こんな言葉に踊らされて、買って読んで、感動したのに。それはパンを盗んだり、銀の燭台をネコババしたりがなかったら、子供にインパクト与えんやん。けずるんやったら、最後のパリの革命だかなんかのほうやろ。と思いました。

 それとも、最近の子供はこんな話の方がおもろいと感じるんやろか? いやいや、うちの子はつまらん言ってるで。いくら最近の子はテレビゲームや漫画で、名作読んでも感動せん。といわれますが、本当にそうなんやろか?おもろいもんは、いつでも誰にでもおもろいんやで。下手に気を使って手を加えるから、子供ものってこんのと違いますか?
 でも、うちの問題は解決しました。なぜなら、いつもは交通の便が悪い(駐車場が隣接してない)ので行かなかった市立図書館に、予算がなくて新しい本が購入できないせいか、低学年用の“がんくつ王”や私の知ってる“あぁ無情”があって、借りることができたからです。「こっちのほうがおもしろいわ」と子供も言っておりました。
 けど、子供の本を見てなつかしく思い、かつての愛読書(小6時代)“ナンシー・ドルー”シリーズが見あたらなかったのが、少し寂しかったです。

1999年11月

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