VIC FAN CLUB
ESSAY

大町だより 2

冬の洗礼

上村 縁

 引っ越してきて、みんなに言われました。「ふーん、最近引っ越してきたんだ。じゃあ、冬は今年が初めてなんだね」と含み笑いされつつ。そして、職場では毎年冬がどんなに寒いかを、そして積雪量がスンゴイだと解説され、ドキドキしておりました。
 紅葉のシーズンを迎え、家のまわりの山々が本当にキレイだったのです。ああ、紅葉ってこんなにキレイなんだあ。と、乙女チックに妙に感傷的になったりしていました。
 そして、その朝はやってきました。

 その日は珍しくお寝坊をしてしまい、けれど体が動かず、それはそれは自分にムチ打って、起きたのです。トイレにたち、窓の外がなんか白いなあ。(トイレの窓はすりガラス)とぼやーんとしておりました。でも寒さでからだがドンドン目覚めていくうちに、頭の中身も晴れてきつつありました。「お、チョット待って。なんで白いねんな。道路はアスファルトやから黒いはずやろ?」ガラッと窓を開けたとたん、私は我が目を疑いました。そこに広がるのは一面の銀世界。しかもまだ降り積もっているのです。おどけちゃった(大町弁でおどろいた)とはこのことです。もう、こうなったらひとりで驚いてはいられません。即、全員を起床させました。が、だんなの「ゆかちゃん、朝からウルサイよ。もうちょっと静かになんないの?」だの子供達の「おかあさん、また寝ぼけとるんちゃう?」だの文句を言われ、ムッとした私は窓を思いっきり、全開し「ほら、見てみなよ」と誇らしげに言ったのです。みんなおおっと驚いてくれ、とてもご満悦だったのですが、「ゆかちゃん、ストーブつけてよ」という言葉に我にかえりました。「灯油なんて買ってるわけないやん。一昨日の日曜なんか、あんなに暖かかったんやもん。」「お前、バカじゃないの? あれほど冬はスゴイって言っただろ。」「そうやって、お母さんケチやもん。こうてくれてるわけないやん」と、家族の非難ゴウゴウ。

 結局、だんなのおとうさんちが2軒隣で、そこに灯油があったので、当座はしのげました。子供達は、たまたま昨晩中にだしておいた、ジャンパーを着て、りんねえはブツブツと。葉月はワクワクして学校へ出かけていきました。さて、私です。通勤には、車を使っています。が、スタッドレスタイヤはまだ買ってもありません。ないからもちろん、タイヤ交換もできません。やんでいるならともかく、降り続けているので、早くでて、徒歩かな? と思っていたら、さっき灯油と一緒に自分のスタッドレスもつんできてて、だんなが自分の車をタイヤ交換しているではありませんか? 「なあ、今日は店?」「そうだよ。わかってるよ。だからこうやって、急いで換えてるんだろ」そうして、私は市長さんのように、玄関ホールまで車で乗り付けて、出勤したのでした。

 そして、朝の灯油買い忘れ事件を話すと、ほとんどの人が買っていなかったではありませんか! 「あれほどみんなに非難される筋合いじゃなかったってことやんか」と、一安心していたのですが、私のシマの長老さんに「上村さんもこれで大町の冬の洗礼を受けたわけだ。でも、これしきでおどけてたって、だめだでね。これからだで、寒くなるのは。今朝はそれほどなんだから。もっとおどけるよぉ」と、またまた含み笑いをされました。

 今朝よりおどけるってどんなだ!! と聞きたかったのですが、朝から10月の積雪を経験して、精も魂もつきはてていた私は、聞く元気がありませんでした。でも、午後からは雪はやみ、晴れ間もみえ、2000m級の山々は白い雪が夕焼けに映えてむちゃくちゃキレイでした。ああ、自然って偉大!!
 では、またの報告にご期待を!! ところで今は何度だろ? 今晩は暖かいような気がする。それでも5度くらいなのかな。

2002年11月

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