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VIC FAN CLUB: ESSAY
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ともこの読書日記3


旅をするなら…

嶽山 智子
Tomoko Dakeyama

愛しのD氏は、ただいまわが社のマレーシア工場へ1カ月間の出張中(シクシク…)。ショックを受けつつも、出張が決まった頃に本屋さんでみつけたのが『マレー半島スチャラカ紀行』(新潮社)。題名のいい加減さに加え、帯に書かれている“一読必笑”の文字につられた私なのです。もっとも出張はクアラルンプールのごく近くの都会、本の内容はマレーシアのジャングルや郊外(秘境?)の紀行文ということで、来るべき出張に備え、英語のお勉強にいそしむD氏のかたわらで「頭に着けるライトいらん?」とか、「サバイバルストロー(どんなお水もストローで浄化!!)は?」、と口走る私に、D氏には「これ、ガイドブックのつもりで買うたん?」と、あきれられたりもしたのですが…。面白かったよ、でも、この程度で“バス・電車での読書は、お控え下さい”まで書くなよなー。

 紀行文と呼べるのかは別として、文学系では林望、アート系では妹尾河童、野生系では椎名誠…etc. と、世界を歩いて、暮らして、書かれた雑文は好きなほうです。中でも椎名さんのモノは、昔思いを寄せていただけあって、全部読んでます。お勧めは『パタゴニア』(これは実は奥さんへのラブレター)『シベリア追跡』かな、怪しい探検隊のシリーズも面白いけど。

 そして今回、皆様への一押しは『目のうろこー尻暗い観音ユーラシアひとり旅』(集英社)なのです。作者は小田空さんというマンガ家。エッセイあり、マンガありで、驚きのエピソードにあふれているこの旅行記、ほのぼのした絵柄の奥に、前向きで、力まないたくましさがあります。国籍不明のファッション、どんな悲惨な体験(マラリアなんてもんまで)もその国の印象を決めるマイナス要素にしないおおらかな心…。各国の言葉をちゃんとお勉強する謙虚な気持ちも見習わなくては…、なかなかできないけど。
 それから絵心。この本の中にもそれは沢山の挿絵が盛り込まれています。各国で食べた思い出の食事、出会った人達、泊まったお部屋など。もちろん写真もあるのだけど、雄弁に語りかけてくるのは絵の方だったりする。で、私はどうするのかというと、鉛筆画の本を買って少し安心したりするのです。

 ところで皆さん、インドの民族衣装、サリーは有名だけどパンジャビって知ってる? 体を締め付けず動き易そうで、変わってて、欲しかったんですよ。大阪の怪しげなお店で茄子紺のきれいなパンジャビを見つけた時は「やったー!」と思ったのだけれど、一緒にいたD氏に「時期が悪いのちゃう?」と、却下されてしまった。なぜなら、似ているのです、オウムのあの服に…。でも今度見付けたら買うたるで〜、と思っています。アジアの民族衣装って、チャイナドレスとか、ベトナムのアオザイとか、きれいですよね。中近東のあたりもいいな。無国籍にどんな素材も着こなせるお方がうらやましい(イメージとしては諸戸さん)。

 偶然見つけたこの本は、作者そのままに飾らないザラ紙でできているのですが、私の大のお気に入りになってしまいました。世界を飛び回るファッショナブルなワーキングガールも捨てがたいけど、そのうえパッケージ旅行しかしたことのない私だけれど。パスポートとカバンひとつで「いってきまーす!」あとは何に逢えるかなー。いつかこんな旅の出来るお方になりたいと思っています。

1996年5月

写真は上から
「マレー半島すちゃらか紀行」若竹七海、加門七海、高野宣李著/新潮社
「目のうろこ〜尻暗い観音ユーラシアひとり旅〜」小田空著/集英社

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