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Elegantly Wasted

わたしの大好きな本とCD 3

INXS 「ELEGANTLY WASTED」

谷澤美恵

 15年くらい前、民放で平日深夜にMTVを放映していたことがありました。ロック・ファンの私は喜んで毎週欠かさず見ていたんですが、その時にINXSの「NEED YOU TONIGHT」のビデオ・クリップを見た記憶があります。印象的なギターのカッティング、歌詞に合わせて画面にデカデカと出る「WHAT YOU NEED」という文字と足の長いボーカルがやたらカッコ良かったのを覚えてます。
 でも、ロック・ファンといっても当時はへヴィ・メタにどっぷり首まで漬かっていたので、INXSの曲はちょっと軽めに聞こえ、カッコいいと思いはしてもレコードを買ってまで聞く気は起こりませんでした。そのままずっと忘れていたんですが、何年か前に突然あのビデオクリップのことを思い出し、「あれ、なんてグループだっけ。えーと、えーと…確かINXSや」と無事バンド名まで思い出したのです。カッコ良かったな、懐かしいな、聞いてみようかなと思ってたらグッド・タイミング!ニューアルパムが発売されるというニュースをラジオで聞いたのでした。その時流れた新曲、「ELEGANTLY WASTED」が、これまたカッコいい! 迷わずCDを買いに行きました。

 「SHOW ME」で幕をあけ、「ELEGANTLY WASTED」へと続くマイケル・ハッチェンスのボーカルは、もううれしくなっちゃうくらいセクシー。なんでこんなに悩ましげに歌えるんだろう。もうほとんど狂気に近い。技術ではなく、感覚でロックしてる。こんなボーカルは、そうはいないと思う。
 アメリカでのセールスの不振、マネージャーとのトラブル、ハッチェンスのスキャンダルなどが相次ぎ、バンド自体の覇気が全くなくなってしまっていた悪夢のような時期がかなり長く続いていたようだけど、やっぱり彼らはそのまま消えてしまうようなバンドではなかった。こんなカッコいい新作を聞かせてくれたのだから。結成以来17年間、一度のメンバーチェンジもなく…ってどこかで聞いたような。そう、彼ら はR.E.M.、U2と同じ80年代にデビューし、一度もメンバーが変わることなく活動を続けてきたのです。

 バンドのこれからの活動、自分たちの音楽のルーツを大事にして、新しいこともどんどん取り入れていきたいということなどをハッチェンスは熱く語っていたといいます。なのに…あまりにも突然に彼は逝ってしまいました。この生き生きとした、最高にカッコいいアルパムを残して。

1999年1月

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