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ESSAY

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旅に出る 3

奥穂高岳3190メートル

小田映子


 上高地が好きです。そして上高地から穂高に至る道、風景その全てが好きです。
 私が初めて上高地に行ったのは、20年前の事です。それから毎年のように行き、距離を延ばし、ついには穂高に登りました。奥穂高岳・北穂高岳・前穂高岳。でも穂高の中でも西穂高岳だけは、全くルートが違うので行った事がありません。あくまでも、上高地から延々歩いて歩いて、横尾・涸沢(からさわ)を経て穂高に登る道が好きです。今年の山行きは、最高の天気でした。全く雨が降らなかったのは、今回が初めてです。

 上高地には、朝早く着きます。マイカー規制があるので、平湯の村営「あかんだな駐車場」に車を預け、路線バスで上高地に入ります。びっくりしたのは、今年から観光バスの乗り入れも規制していました。バスツアーで来る人達は、平湯で一旦地元のバスに乗り換えないといけなくなっており、不便になって来る人が減ったかなーと思いましたが、上高地は今年も人でいっぱいでした。
 上高地は、観光の人も登山の人も入り交じっています、その光景も好きです。バスターミナルから、あの有名な「河童橋」までは、歩いて10分。橋は、清流「梓川」にかかっています。そこから更に40分ほどで、「明神」に着きます。ここには明神池があって、広くて奥の深い池にカモがたくさん泳いでいます。ここぐらいまでは、観光の人もたくさんいます。更に歩いて50分ほどで、「徳沢」に着きます。ここでおいしいソフトクリームを売っているので、今回も食べようとしたら、「すみません、今コーンを切らしていて、クリームだけカップに入れますけど・・・」と、言われました。そう聞いた瞬間聞き返してしまいました。「値段いっしょですか?」(すみません関西人で)答えは・・もちろんいっしょでした。(なんでや)結局、娘だけが食べました。

 更にさらに歩いて50分ほどで、「横尾」に到着です。観光の人も、ハイキングの人も、最大ここまでです。ここから先は、完全に登山の人たちが先に進みます。この先に行きたい、この橋を渡って進みたい、そう思いながら帰って行った事もありました。その橋を今年も渡って、「涸沢」に向かいました。そして、今年もおサルに出会いました。今年は単独のサルがふつうに、私たちが歩く道を歩いていました。さほどこちらを気にする様子もなく、のんびり木の実を食べたりしながら、山の中に消えて行きました。しかも今年は、横尾を過ぎた森の中の道で、クマの親子が現れたそうです。クマに出会ったらびっくりしますよね。
 道は、横尾から少し行ったところの「本谷橋」まではなだらかです。上高地から横尾までの道と同じで、ずっと森林浴気分です。でも、そこから先は、ひたすら登りの道です。息が上がって、汗ダラダラ、ただひたすら登るしかない道が続きます。行き交う人も登山の人ばかり。「コンニチハ〜」と、山特有?のアクセントで挨拶を交わします。
 ものすごくしんどい。でもすごく幸せ。3時間ほどで、ついに「涸沢」に到着です。歩いた距離17キロ、歩いた時間6時間ほど、標高1505メ−トルの上高地から、2309メートルの涸沢まで、登って来ました。とにかくいい天気。次の日登る奥穂高も穂高岳山荘もくっきり見えます。翌日を楽しみに、涸沢ヒュッテに泊まりました。

 翌朝、ヒュッテのお弁当を持って、まずは山荘を目指して登ります。昨年は、涸沢まで行きながら、大雨でそれ以上登るのを断念したので、ここから先は娘は初体験です。私たちも10何年かぶりの事です。涸沢までの道よりも、ずっと急な登りが続きます。くさり場もあり、岩場に張り付いて登るところもあります。途中何度も休憩しながら、3時間近くかけてやっと「穂高岳山荘」に到着。まずは、山荘に荷物を降ろして、再度出発。とうとう奥穂高岳に登ります。垂直ハシゴやくさり場など、こわい登りもたくさんありました。ゆっくりゆっくり時間をかけて、1時間ほどでとうとう山頂に到着です。
 「奥穂高岳3190メートル」(日本第3位)の頂上に立ちました。家族3人で、登り切りました。ヤッター!山頂では、霧が出たり引っ込んだりの天気でしたが、遥か下に上高地が見えました。ジャンダルムも見え、槍ヶ岳のてっぺんも見えました。気持ちよかったです。山頂では、ゆっくりしました。。いろんな所からこられている、たくさんの人と話しました。それから又、ゆっくり山荘まで降りました。でも、もう降りる一方だと思うと少し寂しかったです。登り切ってしまうと、後は降りるのみですね。そして穂高岳山荘に戻りました。そして、その日の夕方の「夕日・夕焼け」は、それはもう見事な空でした。山荘のスタッフも思わず見に走るほどの、素晴らしい夕焼けでした。しかも、高いところにあるからなのか、空の色をかえながら、いつまでもいつまでもきれいな空でした。夜空の星も最高にきれいでした。あんな大きな北斗七星も初めて見ました。そして、次の日の朝、またまたすばらしい「ご来光・朝焼け」の空でした。雲海もきれいでした。

 そうして、後は下るのみです。涸沢を過ぎ、横尾・徳沢・明神を過ぎて、河童橋です。途中すれ違う登山の人達がうらやましかったです。自分も登ってきたのに、です。そして、「小梨平キャンプ場」に一泊して、次の日上高地を後にしました。上高地から平湯へ戻るバスはとても寂しい・・ホントに上高地とお別れです。
 平湯では、「ひらゆの森」という名前の温泉に入って帰ります。楽しかった4日間、あっと言う間に終わってしまいました。みんなよく頑張りました。やっぱり一番元気なのは、娘でした。私達は、2日ほど足がガクガクでした。日頃の運動量が全然違いますから、しようがないですね。今回は、とにかく天気が良くて、ついに一度も雨ガッパを使わずにすみました。その上なんと、日焼けまでしてしまいました。

 最後に、私のわがままに付き合ってくれた家族に感謝。登ることが出来た健康に感謝。それから、すばらしい景色・夕焼け・星空・朝焼け・山々などを見せてくれた晴天に感謝、です。本当に、心に残る素晴らしい旅でした。

2004年9月

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