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ESSAY

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旅に出る 2

ハワイに行きたい

岡田祐子


 Hawaii 南の楽園、青い空、青い海、原色の花、観光の島、ショッピング天国。日本人の大好きな場所。盆と正月には日本人で溢れかえる島・・・
 みんなが「いい」というものにはなぜか抵抗感のある偏屈ものの私は「ハワイなんか絶対に行かない!せっかく海外旅行に行くのに何で日本人ばっかりの所に行くのよ」と思う自称アンチハワイ派でした。友人と旅行に行こうと計画を練っているときに友人は「初めての海外旅行だし、一生に一度は行ってみたいと思ってたハワイに行きたい」と言い出しました。もちろん、アンチハワイの私は猛反対しましたが日程、予算がぴったり合うのはハワイのツアーとグァムのツアーのみ。確かに初めての海外旅行にはぴったりの場所のようだし、行った事もないのに文句も言えないなと思い気乗りしないままツアーに申し込みました。

 ところが・・・関西空港を出発したとたん、少しずつ気分は変化してきました。飛行機はJALのリゾッチャ。リゾート仕様の機内に知らず知らずのうちに心はウキウキ。キャビンアテンダントもみんなアロハを着てとってもスマイリー。ホノルル空港に到着するころにはすっかりハワイの魔法にかかってしまいました。飛行機の窓から見える景色。そう、旅行番組に「もういいよ」ってくらい出てくる白いビーチに青い海。高層ホテルとダイヤモンドヘッド。期待を裏切らず、頭の中にあった景色が実際に目の前にどんと広る様子には感動しました。空港から出るときには完全に「ハワイ大好き日本人」へと変身していました。

 それからの5日間はまるで天国ですごす日々のよう・・・。ホテルは大きくてなんでもそろっているし、食べ物はおいしい。気候も暑いのですが湿度がないので日陰に入ると涼しし、持病の頭痛もまったくありませんでした。旅行会社の無料で乗れるトロリーバスに乗り、ホノルル周辺を観光。絶対に嫌だって思ってたのにカメハメハ大王の像の前で首にレイをかけて写真に写っている私はこの上なく幸せそうな笑顔です。

 帰国してからもハワイの魅力にとりつかれた私はもう一度行きたくてたまらなくなり、次の年に今度は10日間の日程で行くことにしました。誘ったのは「え〜〜っ、ハワイなんか嫌よ〜」と言う友人3人。ホノルル空港到着までは彼女たちも少しずつハワイの魔法にかかってきていました。しかし、空港でちょっとした(?)トラブルが起こってしまったのです。入国審査のとき、にこやかに応対してくれていた審査官のおばさんが私の名前をパソコンに入力したとたん、顔つきが険しくなり、早口の英語で
電話をしました。するとすぐに巨体の警備員2人が「こちらに来てください」と私を奥の部屋に連行して行きました。英語がわからない私は不安でいっぱいです。小さな待合室のようなところには日本人観光客が15人ほどいました。1人だけではなかったので少し安心して待っていました。すると、その中の親子らしき女性2人が職員に呼ばれました。「あなたのビザでは入国できません。8時間以内に強制退国!」とカタコトの日本語で宣言され書類にゴーンと音を立ててスタンプを押してました。女性2人は大声で泣いています。安心したのも束の間、私の背中には冷や汗が出てきました。

 次々と呼ばれていく中、私だけがいっこうに呼ばれません。しばらくするとまた巨体の警備員2人がやってきてさらに奥の部屋へ連れて行かれました。その部屋には制服を着た日系の中年の女性が座っています。「何なの??」と思いながら座ると「移民局です。あなたは違法滞在で手配リストにのっています。今までどこにいたか?」とやはりカタコトの日本語で聞かれました。あせった私は言葉が出ず、パスポートの入国スタンプを指差すのがやっとでした。結局は空港のミスで出国手続きができていなかったようです。英語の出来ない私は文句も言えずに帰ってしまいました。外に出てみると不安そうな顔をした友人3人が待っていました。連行されてから2時間。なんて友達思いなんだろうと少し感動しながら「先にホテルに行っててくれたらよかったのに」と言う私に「あんたがホテルのクーポン持ってるでしょ!」と冷たく言われました。

 こんなスタートでしたが、後は楽しく過ごしました。私は1日中ホテルでのんびりとすごそうとスーツケースに本を10冊くらい詰め込んで行っていたのですが行動力あふれる友人達は1人ホテルに残る事を許してくれず、10日間、オアフ島の隅々まで観光しました。この次に行くときは1人でゆっくり読書の旅がしたいです。あぁ、この原稿を書いているうちにまたハワイに行きたい病が出てきました。「ハワイに行きたいーーっ!旅に出たいーっ!」

2004年7月

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