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ESSAY

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旅に出る 1

ニューカレドニアの時間

清重智子


 ニューカレドニアは、天国にいちばん近い島といわれていた場所だ。海は、特に美しく、砂浜は日本にくらべものにならないくらい、さらさらしてきれいだった。
 フランス領のなごりか、フランス語もつうじるが、島に住んでいる人にはあまりつうじない。
 ヌメアにある中心街は、ニューカレドニアの中でも大きな町だった。私が泊まっていたホテルからは、バスに乗ってしか行くことができないので、バスに乗って中心街に行くことにした。
 バスに乗る前日の夜に、コース、降りる場所など、あらかじめ「地球の歩き方」の本をよく読んで調べた。バス停は、ホテルの前にあったが、時刻表はなかった。バスの運転手たちは、好きな時間に、決まったコースを走っているらしい。小型のバスで、ドアも運転手の横についていて、手動であけてくれる。バス代は決まった金額で、ドアのそばの箱に入れた。降りるバス停は決まっていて、自分で降りたい時はブザーを押すと、必ずバス停に止まってくれた。
 私の降りる場所も、旅の初日に市内観光した時に通った道を思い出しながら…やっと見覚えある町が見えてきたのでブザーを押して降りた。
 町といってもたくさんの店が連なって建っていて、ちょっと高級なフランス製の物が売っている店は、大きな家になっていた。
 季節は夏の終わりだったが、みな、半袖のTシャツに短パンでうろうろと歩いていた。
 日本へのおみやげなどを買って、町の中心にある公園でお昼を食べた。12時くらいになると、店の人とたちはいっせいに店のシャッターを閉めはじめた。そして、ぞろぞろと歩いてお昼を食べに行ってしまった。公園ではペタングをしている数人のおじさんたちがいた。なんとものんびりしている。
 その日は土曜日だった。午後からお店が開くだろうと思っていたのに…お昼を食べた人たちは、町の側の海の方へぞろぞろと歩いていく…気がつくと静まりかえり、どのお店もシャッターが閉まったまま…町からすっかり人の気配がなくなってしまった。
 呆然としてうろうろしていると、日本人客相手の日本語が話せる店員がいる店が数軒あいていた。結局その日はあきらめてホテルに帰ることにした。バスもバスターミナルが近くにあったので、始発から乗ってようやくホテルに着いた。
 あとでわかったのだが、土曜日の午後からと日曜日はほとんどの人が、お仕事を休みにするらしい。
 バス停に時刻表がなくても、町の人はそれがあたりまえで、ゆったりとした時間が過ぎていく、そんな気がした。1週間の滞在中、2泊ほど離れ小島に泊まったが、そこのホテルの部屋には、時計もテレビもなかった。
 時間にしばられず、のんびりとゆったりと好きなことをしながら、1日1日過ごしている人たちを見て、うらやましく思った。日本ももっとゆとりのある時をもつことが大切じゃないかと感じた。
 島の人たちの顔が、みな、とても、にこやかだったのが、とても印象的だった。

  2004年6月                                                    

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