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カリフォルニアだより

第13話 〜ぼろはきてても〜

杉山洋子

 さて、ようやく帰ってきました、日本!!今(9月)はとりあえず蒸し暑さと戦っております。
 帰国してから2週間ほどたちますが、印象的だったのが「こぎれいさ」。たとえば車、これは予想していたのですが、皆さん本当にきれいな車に乗ってらっしゃる。前に書きましたがアメリカでは「走ればよし」的な車が多いので、通りをみていると目がくらみそうな感じです。
 そして、服。帰国して私の両親に開口一番言われたのが、「あんた、何にも服をもっていないじゃない!恥ずかしい!」恥ずかしいって・・・例えばTシャツ。幾らなんでも、大きな穴があけば私だって着ません。生地が透ければ着ません。でも、ちょっこり色落ちしたくらいなら、近所へは着てきます。それが両親的には“NO”だったようです。まあ、私の実家は片田舎なので、里帰りした娘が色落ちしたTシャツを着ていては体裁が悪いのかもしれないですが…。この辺の“体裁”ギャップがまだまだのりこえられないようです。
 そういえばアメリカに住み始めたころ、ちょっと軽い驚きだったのがみなさん普段着は本当に普段着だったことです。年齢に関係なくカジュアルなTシャツにパンツ、私が住んでたような田舎なら銀行の受付でもカッターシャツにGパン、とか。多少のドレスコードというのは確かに存在するのですが、不快感を与えなければ日常業務や日常生活はOKという世界でした。日本でいうところのリサイクル・ショップも本当に数多く、普段着ならそういうところやめちゃ安デパートへ行く、という感じ。でも、みなさんちょっとしたパーティーでもきれいな格好をしてくるので、メリハリがついていたといえるんでしょうか。合理的ですよね。日本ほど“体裁”という感覚がないのは確かだと思います。
 でもそれは、「差別」という感覚が確かに存在し、そのクラスにあった身なりをしていればいいんだという気分の現われでもあったかもしれません。住んでいる場所、職種、収入、家柄などその基準はさまざまなのでしょうが、その差によって使うスーパーさえなんとなく違うような(もちろん入場規制とかはないですけどね)“雰囲気”というものは感じたときがあります。それに生きるのに本当にいっぱいいっぱいな人の割合も日本より多いのかもしれません。なんたってリサイクルショップで、下着まで取り扱っているのですから。
 日本からぽっと飛び込んで、まともにビジネスシーンに出なかった私には、そういう“気”を感じることはできませんでした。でもとりあえず、服に関心のない私は、「必要もなくこぎれいにしない」ライフスタイルにはどっぷりはまってしまっていたようです。
 今日も親に「着替えなさい!」といわれ、一億総中流社会の生きにくさを感じる私です。ああ、服買わなくちゃ。

2002年9月

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