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カリフォルニアだより

第7話 〜すばらしい車社会〜

杉山洋子

 今更ながら、アメリカは広いです。車がなければ生活に困る、これは特に私の住んでいるような田舎では本当です。一番近いスーパーまで徒歩15分(それでも近くにあるほうです)、学校までは車で30分。私はいつだったか、「それはここから5分くらい」と言われて「車でですか?」と聞き、「当たり前だよ」と笑われたことがあります。要するに徒歩でどっか行くという感覚がない人が多いんですよね。まあ、これは治安の面と関連しているのかもしれないですが。
 で、すっかり足の一部と化している車、車社会について、「おお」と思ったことをいくつか。

1.おそるべき車たち

 『ハード・タイム』はもうみなさん読まれたんでしょうか。ヴィクの愛するトランザムがぼろぼろにされて、ヴィクがやむなく中古車「錆び錆びモービル」を買いますよね。もし私が日本でこれを読んでいたら、「錆び錆び・・・」とちょっとぎょっとしたと思います。でもこっちでは全然めずらしくない! バンパーが取れているなんてかわいい方、フロントがへこんだままの車、サイドが壊れたところにガムテープ(にしか見えない)を貼り付けただけの車、ボディーとドアの色がまったく違う、要するに違う車の部品をくっつけて、塗装なんて気にせず走らせている車…最初のころは「うわわ、あんな車でも走ってる」といちいち感動していましたが、このごろすっかり慣れました。そんな車が多い一因は、アメリカに日本のような厳しい車検制度がないから。州によって違いますが、ここでは年に1回排気ガスの検査が義務づけられているだけ。だから、「とにかく走ればいい」という感じになるみたいです。
 でも、外観が恐ろしい場合、中身も恐ろしいことが多いのが困りもの。こちらに来てぎょっとしたのが、車火災の多さです。渋滞だ、前の方で消防車がいるぞ、なんだろう…おおーっ、車がこげてる! これ、けっしてTVに取り上げられるような珍事ではありません。幸か不幸か、火を噴いている現場にはまだ出くわしたことはありませんが。

2.交差点の停電

 信号がない交差点にさしかかったら? たいていSTOPサイン(止まれの標識)があるのでまず止まる。複数の車が止まった場合、先にきた方が先に通過できる。四方からほぼ同時に止まっても同様。「4−WAY STOP」と言われています。
 信号のある交差点では、もちろん信号を見て渡ります。ところが、この辺の信号、頻繁に断わりなく停電するんですよ。カリフォルニアの電力危機のせいではありません。信号のメンテに対する意識が甘いのか、大嵐が来たわけでもないのに突然片道3車線の信号が黒くなっている。でも、慣れているのか全然パニックにならないこっちの人。どうするかというと、片道何車線あろうがその巨大な交差点で「4−WAY STOP」を始めるんです! 何度やっても慣れません。「あ、あっちが出た、で、次はあの方向ね、あ、私の前がでた、そしたらこっちで…」と、自分が渡り終えるまでは緊張の嵐。たまに礼儀正しくない人もいるので、気が抜けません。
 「日本じゃこんな目にはあわなかったー」とぐちぐちいってたら、ダンナは日本でも遭遇したそう。え、え、どうしたの? と聞いたら、「なんとなーく周りに合わせた」という恐ろしいお答えをいただきました。とすると、きまりがしっかりしているだけこちらの方がいいのかなあ…いや、その前に、信号の停電が日常茶飯事になるのを何とかしてほしいぞ、交通安全委員会(でも、アメリカの信号って誰が管理しているのか、本当のところは知りません)。

3.スクールバスには会いたくない

 TVなどでおなじみ、黄色いスクールバス。たくさん、たくさん、走っています。子どもに関しては時折とっても気を使うアメリカ、このスクールバスに関する交通法規もしっかりあります。それは、「スクールバスが赤ランプを点滅させたら(子どもが乗り降りする合図)、後続の車、中央分離帯がない場合反対車線の車も停止すること。」
 運転免許試験の勉強中、この法規を読んだときは「ほー、子どもの安全に気をつけているんだな、感心」と単純に感動しました。そしてそれは確かに大切。子どもなんて、平気で飛び出ししますもんね。でも、実際街を走るようになって…「多すぎる、スクールバス!」
 特に登下校の時間。道路にはスクールバスがあふれます。そしてよく止まります。その上やっかいなことに、止まっても赤ランプを点滅させる時とさせないときがあります。点滅させる場合分けがきまっているのか、運転手の気分次第なのか、ラッシュ時に交通を止めるのをためらうのか。いまだに事情が判らない私は、スクールバスの後ろについてしまうといつ止るのか、赤ランプを点滅させるのか、落ち着きません。
 いっそのこと抜いてしまえ、とスピードを上げたとたんに「チッカッチッカッ・・・」いやがらせ?

2001年7月

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