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Chissarossa の I LOVE CINEMA 22

『ハウルの動く城』は大人のロマン

 「うん。もう一回見よ〜〜」と思ってしまいます!!『ナルニヤ国物語』と『オズの魔法使い』とを、ゴシャゴシャ混ぜ合わせて、それから、その中に、今どきの女性達をポンポンポン〜と投げ入れたみたいなちょっと大人な童話、夢物語とでも申しましょうか・・・。この「もう一回見よ〜」と思う理由が、最近韓流ドラマが流行っていて、そのドラマがなんで流行るか?という理由と重なるような気が致します。
 今回は、宮崎監督の原作では無く、原作は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズで、原作の題名は「魔法使いハウルと火の悪魔」。日本では1997年にお目見えしましたが、本国イギリスでは1983年の出版です。彼女は、この作品でもその影響が顕著に見られますが、オックスフォード大学時代には、なんとなんと、あの『指輪物語』の作者、ト−ルキンに師事していたのです。うらやましい事ですねえ!直に指事を受けた方が、着実に、その道を継いで行っているのですねえ・・・。
 ってわけで、物語そのもは、真に読みごたえのある、見ごたえのある事保証付きです。そうすればする程、こういう物語を映像にしたりする事は難しいもので、故に、先年の『指輪物語』の映画化は実に完璧に見事で、この”I LOVE CINEMA”でも誉めまくった訳ですが、この『ハウル〜』も充分に誉めて差し上げられます!アニメーションであるという事で、ハリ−・ポッターのシリーズ等よりは、ファンタジーを表現する方法が容易ではあるとしても、見ごたえのあるものにするには、その造りに、一つも気を抜けるものではありません。
 元々の原作自体が、低年齢の子供達には(今日では中学生ぐらいでないと無理かな?)、ちと難しいと思われるので、多分、幅広い年齢層を対照に考えて、ザクザクと簡素化してありますが、そのザクザク加減が、お話の流れにスピード感を持たせ、とても上手く行っていると思います。単純に、魔法の理由がよく分らないとか、言いたくなるやもしれませんが、それこそ、本来の宮崎作品の醍醐味とでも言いましょうか、本を読むのとは明らかに違う、映像にして見る「ハウル〜」であり、ストレートに気分を高揚させてくれるものでしょう。それに、映像は実に細やかに出来ていて、端々までよく見れば、本を読むより確かなくらい、全ての行動の理由を説明が仕掛けてあります。これを何度も見て、各自が勝手勝手に読み説くのが、また宮崎作品の面白さでもあると思うのです。書き過ぎない面白さ・・・とでも申しましょうか。

 魔法使いに魔女が実在する国インガリー。どうもこの国の最近の雲行きはあやしい・・・。荒れ地の魔女は盛んだし、美女の心臓を食べてしまうという、魔法使いのハウルの動く城までうろつき始めている。
 そんな国に住む3人姉妹の長女ソフィーは、しがない下町の帽子屋を、長女の役目と若い身空で継いで、毎日懸命に地味な仕事をこなしている。次女のレティーは町一番の「チェザーリ」というケーキ屋の看板娘。でも、ソフィーったら・・・地味で、何がしたいのかよく分らないし、きれいでも無いし・・・とソフィーは思っている。
 ある日、唐突に美貌の青年に出会い、つかの間の空中散歩をするはめに・・・彼は何者かに追われていた。しかし、ソフィーはその夜、これも突然に荒れ地の魔女の呪を受けてしまい、90才のおばあさんにされてしまった!なんとかしなくちゃ!ハウルなら何とか出来るかもしれないと、ハウルの動く城を目指し、掃除として住み着いた・・・え・・!?ハウルって、彼の空中散歩の美貌の青年では無いか・・・なのにソフィーは90歳のおばあちゃん。でも、もはやソフィーはジミで控えめなソフィーではありません。おばあちゃんは、どこまでだって逞しいんです!カブのかかしは引っこ抜いて助けてやるし、我侭な火の悪魔カルシファーだって、お構い無しにゴシゴシこき使っちゃう。歳を取るって身体はギシギシ大変だけど、捨てるものがほとんどない
とか、いろんな事に卓越しちゃって、ちっとやそっとの事じゃ驚かないし、機転は利きまくるし、なんとも元気なものよ・・・と、ソフィーは、まさに開き直り状態。どんどん益々元気になってひたすら前向き、パワーアップ!ただし、カシルファーとハウルは契約を交わし、カシルファーは暖炉の前を動けない・・カシルファーはソフィーに契約の秘密を見つけてくれたら、ソフィーの魔法も説いてやると取り引きを持ちかけて来、それをソフィーは受ける事にしたが・・・。
 「美しく無きゃ生きていけない〜」なんて軟弱な台詞を吐きながら、ハウルは幾つもの変名を使って、幾つもの町で気侭に生きている。でも・・・国の雲行きの怪しさは、遂にはっきりと戦闘という形になり、ハウルは毎晩どこへか出かけて行く・・・鳥になって。そして、帰って来る時は怪我だらけで・・・。ハウルは一体何を?ソフィーの魔法は解けるの?

 この映画を見て、拙者は、物語そのもの以外にも、すこぶる感動致しました。遂に、女性の本来の強さを素直に現してくれるものが出て来たわ!と。特に日本においては、”女性は若い程良い”という世間の意識は強硬なものですが、それがだんだん崩れて来たという事なのでのでしょうか・・・本当は若いにしても、その若さに戻るのだと分っていても、物語の大半を90才のおばあちゃんが、主人公として占めたんです、何たる進歩でしょう!素晴らしい!!(映画のヒロインは、常に若い美人だと信じてる御仁には、これこそが残念でしょうがね〜)そして、歳を取ることが、恐怖で無く、無性に愛おしく描かれていて、満更なものでは無いんじゃないかと充分に思わせてくれて・・・生きてこその素晴らしさが、ひたすらに前向きに描かれているのが爽やか
だし、力強いです。大義の生きざまも激しく感動的ですが、地味にコツコツ、確実に大地を踏み締めて生きて行く人のたおやかな力強さは、本当にじんわり感動的なものですね。
 お話が進んで行く中で、90才のソフィーは少女に見えたり、中年女性に見えたり、本当に90才のおばあさんに見えたり・・・。これは、ソフィーの意志とか自信の強さが、場面場面で現わしているのだと思われます。つまり呪は、解いてもらうものなのでは無く、自分で解くのである・・・ということなのでしょう。
 そして、その力の源は、いつだって、そう、『愛』なんです!この愛こそが魔法そのものなんですね!
 ♪〜か・な・ら・ず、最後に愛は勝つ〜♪ さあ、あなたも魔法にかかりに行きましょうよ!

2004年12月

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