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Chissarossa の I LOVE CINEMA 15

たかが結末、されど結末・・・「コールドマウンテン」と「オーシャン・オブ・ファイヤー」

 日本映画の黄金期1950〜60年代、高倉健の映画を見終わって出て来た観客は、そのヒロイズムを自分が背負っているがごとく、ほとんどが肩をいからせていたと聞く・・・。そういや「極道の妻達」なんかを見終わった観客は、同じ様に義理人情のカプセルに入ったごとくの態であるよな・・・。見終わった後の気分って、結局、その映画の結末によりけりであって、それがその映画の存在感なんだなあ〜と改めて感じ入ってしまう。
 それで、更にお話を進めると。

 先頃テレビにて放映があった、ハンサムボーイのブラッド・ピット主演モーガン・フリーマン共演のサスペンス「セブン」や、名歌手のビョークが主演でカンヌでパルムド−ルと女優賞を獲得した「ダンサー・イン・ザ・ダーク」、前々回に御紹介した「ミスティック・リバー」等、いわゆる、名門と言われる賞にノミネートされる類の、良質映画にでさえ見られてしまう、昨今の其処はかとない”暗さ”が、わたくしはとても気になっているのだ・・・原因は、そうなんだな・・・『なんでや〜〜〜!』
と激怒したり、気分が落ち込んだり、果ては、うっそぉ〜〜なんて、なんとも納得できない結論で映画館を後にするなんて、正しい映画のあり方なんだろうか?って思えちゃうからなんだわ!
 大事よねぇ、映画の最後ってさ・・・。

☆ 「コールド マウンテン」☆

 そう、アカデミー賞でも、レニー・ゼルウィガ−が助演女優賞を獲得した「コールド マウンテン」は、アカデミー賞狙いと言える程、王道を行く純粋で美しい恋愛をベースに、アメリカの応仁の乱か?みたいな南北戦争の悲劇を、現代に通じる社会諷刺で鮮やかに台詞をちりばめ、”戦争”と言う人間最大の愚行は人間にどんな影響を与えるのか、また、その影響により崩壊した社会や人の営みを、女性達が再建させて行くという人間の”聖なる性”とでも申すものを描き出したもの。
 インマン(ジュード・ロウ)は、南軍の兵として、もう3年も南北戦争で戦っている。別に戦争に大義を感じて来たわけではない、コールド マウンテンの全ての若者が召集され、いつの間にか来てしまったと言う方が正しい。ここで生き抜こうとする気力の全ては、出征前にたった一度キスを交わしたエイダ(ニコール・キッドマン)への慕いで支えられている。しかし、戦況は悪化の一途、同郷の友人達は次々と死んで行き、遂に、インマンも生死の境をさまよう負傷を負ってしまう。
 一方、エイダはインマンが出征した後すぐに、牧師である父(ドナルド・サザ−ランド)を亡くしてしまう。エイダは父の良き仕事のパートナーとしての役目を果たすために、あらゆる教養を身につけてはいたが、たちまち生活の手段を無くし痩せ細る一方。しかし、エイダは何としてもインマンの帰りを待つのだ。痩せ細り、荒れ果てて行く屋敷を見かね、隣人のサリー(キャシー・ベイカー)は流れ者ルビー(レニ−・ゼルウィガ−)をエイダの元へやる。ルビーときたら全く逞しく、鶏の首は平気でモグわ、農耕技術や家の修理も牧場管理も、どれも男顔負け。彼女の望みはただ”使用人としてではなく同居人”という権利だけ。エイダはルビーに、容赦なく、生きる知恵と術を叩き込まれ、女性二人の農場は着実に復活して行く・・・。
 かろうじて死を逃れたインマンは、もはやこれ以上、戦争のために命を捧げるべきではないと決断、脱走兵となりエイダの元へと向かう。負けがこんで来る軍隊のサガで脱走兵狩りは執拗な上、北軍の進行も容赦がない。あらゆる困難をくぐり抜けやっとコールド マウンテンに辿り着くインマン・・・雪山の中で再会した二人はようやく、ホントにようやく結ばれるのだったが・・・。

 ストーリーも古典的、展開も古典的。だけど、この映画はただ者ではありません!古典的だけど、厭きないのよね〜〜〜まずは、編集がとてもよろし、とてもテンポ感があって。それから、映画のコマーシャルにもなってた一場面だけど、ルビーが「戦争って雨を勝手に降らせておいて、男達は、今度は濡れたって騒いでるの!馬鹿みたい!」って叫んでます。いつでも、いろんな事の答えを、ルビーが実に現実的に答えてくれるんです〜まあ、これが絶妙で面白いのなんの。凄いキャラクターです。このルビーの存在が、全てに鍵を握っていますねえ。はぁ、拍手喝采よ!これがホントの女よ!ってね。勿論、エイダの変身ぶりも見事です。「私が今まで身につけて来た教養とかなんて、本当に生きて行くためには、何の救いにもならないのよ!」なんて叫んでましたけどね。カッコ良く、七面鳥を銃で打つ様にまで成長しました。さらにそれから、(これを言うと、ちょっと楽しみが減っちゃうから宜しくないとも思うんですが)ホンにようやく恋人達を再会させたと思いきや・・・ただでは終わらなーい、まだ先がありましたねえ。落として救う、それとも、救って落とす?この最後は、手放しでは喜べない、なかなか難問ですね。
 ドラマの醍醐味は”笑いとペーソス”って言いますが、この割合いが肝心なんだと思うのです。笑いが7〜8割、ペーソス2〜3割。これくらいでしょう、良質のドラマって。勿論、「コールドマウンテン」は、いわゆる大河ドラマなので、笑いと言うよりロマンでしょうけど。

★ オーシャン・オブ・ファイヤー ★

 打って変わって「オーシャン・オブ・ファイヤー」・・・王道中の王道映画です。描かれる時代風景も、古典的ストーリーという面でも「コールドマウンテン」と同じ類でしょう。けど、トップから話題にしてる暗さはみられません。すっきり、爽やか〜〜〜〜ガッツだぜ!です。はい!。勿論、ちゃーんとペ−ソスもばっちり入ってます。
 ストーリーは単純。実話に基づいてです。車好きの方は御存知でしょうけど、パリ=ダカール・ラリーってので、優勝するのが現代でも、車メーカーにとっちゃ最高の名誉なんですが、フランスのパリを出発してアフリカはサハラ砂漠を突っ切り、西アフリカのセネガルはダ・カールの海辺にゴール!するモーター・スポーツなのです。年々、いろんな機材の発達で、安全にはなって来ましたが、まだまだ前人未到の地のごとしで、リタイアは当然、辿り着けたらそれは優勝と同義語、行方不明やら事故はつきものの過酷なラリーレースです。
 ”オーシャン・オブ・ファイヤー”というタイトルは、これと似た様な仕組みで、アラブ砂漠を抜け、ペルシャ湾とイラクを抜け、更にシリア砂漠をダマスカスへと向かうコース(全長:約4800?)を馬でもって走破する・・・と言うレースそのものの名前で、1000年の伝統を誇り、史上最高のアラブ馬を決定する非常に権威の高いレースで、レースに参加出来る馬は、アラブ王室所有の純血と高貴な血統のモノに限られている・・・というわけですから、ベドウィン族に代表される砂漠の遊牧民でもない限り、ぜーったい無理でしょ!?と、当の遊牧民だって”生きてたどり着ける保証はない”と言い切り、遊牧民の勇者にしか出来ようはずのない事なんだそうです。そうです、ですから当然、そのレースに、アメリカ先住民の馬を守るために、賞金目当てに出ようと言うだけでも、想像がつく程ハラハラドキドキ展開が待っていると予想がつくってものです。
 更に、お楽しみは、ストーリーだけでなく、「ロード・オブ・ザ・リング」で一気に有名になってしまったヴィ−ゴ・モーテンセンが主役だって事です。あら〜〜〜〜全然見た目がちが〜〜う!ヴィ−ゴって、ホントはブロンドでいらしたのね〜〜と、先ず思っちゃう事でしょうし、ひょっとすると、この人が、あのアラゴルンのヴィ−ゴ!?って、なかなか判らないかもしれません。しかし。この方、「ロード・オブ・ザ・リング」の準主役に選ばれただけの事ありますワ!西部劇スタイルがとても良くお似合い〜体つきが美しい方って、本当に様になるものです・・・はい。それから、往年の名優と言うのは失礼です、絶対!今もさすがだわ!といわせる、登場するだけで迫力と存在感のオマー・シャリフが、アラブの族長(王様)で素晴らしい立ち回りを見せてくれます・・・ああ、カッコイイ!
 19世紀末、シーク・リヤド(オマ−・シャリフ)の主催する”オーシャン・オブ・ファイヤー”という究極のホース耐久レースに、アメリカは西部の孤高のカウボーイ、フランク・ポプキンス(ヴィ−ゴ・モーテンセン)が愛馬ヒダルゴと共に参戦した。他の参戦者は皆、勇猛果敢なる砂漠の民ベドウィン族の勇者達など砂漠と共に生きる砂漠の民。彼らはアラブ馬の祖先を辿る直系の馬を所有している〜彼らにとって、それ程、馬の血筋は家宝なのである〜。それから、このレースに勝って、アラブの駿馬アルハタルの種馬権を獲たいイギリス人レディ・アン・ダヴェンポート(ルイス・ロンバート)所有の馬に乗るクルド人。「馬は血統よ」と言い切るレディ・ダヴェンポート、「ヒダルゴはブチで野生馬だからどうせ無理。早く棄権しろ。」と皆からも言われる始末。
 予想遥かに過酷を極めるレース、壁の様な砂嵐を過ごせば、残る者はもうわずか・・・白馬のジニとハヤブサを共に連れたベテラン騎手サクール(アドニ・マルビス)、アルハタルに乗ったアルリ−王子(サイード・ダクマグイ)、レディ・ダヴェンポートの栗毛馬とクルド人。レース中もアルハタルを奪おうと、シーク・リヤドの娘ジャジーラ(ズレイカ・ロビンソン)を誘拐し、甥カティーフが罠を仕掛け、襲撃して来る。シークに頼まれフランクはジャジーラを救う。やっと難を逃れたと思ったその時、砂漠に仕掛けられた落とし穴にヒダルゴと落ちてしまう・・・ヒダルゴの足にはなんと槍が刺さっていた!こんなところまで来て諦めるのか・・・
 西部では先住民の皆が、今か今かとフランクの帰りを待っている・・・フランクが賞金を持って帰ってこなければ、皆の宝の馬達がアメリカ軍に没収され殺されてしまうのだ。そう、先住民の彼らも、野生馬とは言え、アラブの民と同じく、馬は家宝、馬は唯一無二の友なのだ。そして、フランクの中には其の血が半分流れている。彼のもう一つの名前は”青い子ども”・・
 意識が朦朧として来た時に、彼が口ずさんだのはアメリカ先住民の祈りの歌だった・・・
 『映画とはなんぞや』という問いに『エンターテイメント』と答えるならば、アカデミー賞の候補にはならずとも”笑いとペーソス=8:2”のこのドラマは、まさに完璧でしょう。これは、スピルバーグが長い間、賞を獲得出来なかった理由でもあります。この映画を見終わった後は・・・間違いなく、スカッと爽やか、コチトラだって負けないぞ〜〜〜人生ガッツだぜ!!POWERFULルンルンルン〜〜〜です。

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