VIC FAN CLUB
ESSAY

←亜麻里のページ

ビジネスの周辺 1

仕事着について

亜麻里


 「働いているといいね。洋服だっていろいろ買えるし。」特に子供の小さい頃に専業主婦の友人達からよく言われた言葉だ。
 「主人のボーナス当てにしてスーツ買っちゃった。15万円。」なんて友人がいたが、これにはぶっ飛びそうになった。「だって、スーツなんてPTAか子供の七五三ぐらいしか着ないから1着いいのがあればいいもの。」うーんなるほどそれはそうよね。だけど、当時は今よりもっと貧しい子持ちOLだった私は、自分のサラリーとそれを得るための日々の仕事を思うといくらボーナスをもらったときでも1着のスーツに15万円を出す気にはとてもなれなかった。
 たしかに仕事で外へ出かけるのでそれなりの数の洋服は必需品である。お化粧もしなくっちゃいけないし、バッグも靴もいる。毎日同じ服ばかりというわけにもいかず、おまけにいい加減いい歳になってくると、若いときのように1度洗濯をしたらよれよれになっちゃうような安いTシャツとか、「いちきゅっぱ(1,980円)」や「さんきゅっぱ(3,980円)」なんていう服ですますこともできない。おまけに職業柄もあって人前で話すときや人と会うときなどはあんまりみっともない恰好もできないときている。

 「量より質」では回らないし、「質より量」とばかりも言えない、「質も量も」が良いに決まっているが、何より懐具合が許さない。自然、無難で着まわしがきき、素材重視であまり流行に左右されず、かつ手ごろな値段というのが選択の基準となる。ところがこれがなかなか見つからない。娘の「若作り」の言葉にめげず、いわゆるミセス向きの洋服を着ない私は、最近の体の線のくっきり出る、妙に薄い生地のおまけに肩まで出ちゃう色っぽい洋服は非常に辛い。とは言え、ミセスのものってやっぱり若い子の服に比べるとそれなりにお値段はするし、ただでさえすぐに太るウエストは甘やかしそうだし、何よりデザインがなんとなく奥様っぽく、活動的な雰囲気のものが見当たらないように思える。
 私の努力不足かとも思ったが、2年半香港に駐在して春に帰国した友人も同じ意見だった。彼女は私よりも若いが30代で、いかにも仕事のできそうなキャリアウーマンである。
 で、今でも香港に彼がいる彼女は何ヵ月かに1度訪れる香港で仕事用の服を買い、私はというと大好きなクアラルンプールへ行ったときに安くてシンプルな「仕事着」を調達することにしている。なんたって円はまだアジアでは強いし、香港は勿論マレーシアも華人が多く働く女性が大勢いて、手ごろな値段で機能的な服が手に入るのである。おまけに欧米と違って体型も日本人に合うし言うことはない。但し、常夏のマレーシアでは夏服しか買えないけれど。
 かくして、ブランド品の並ぶ高級百貨店や免税店は素通りして、現地の人達とともにショッピングセンターでバーゲンを漁るのが最近の海外旅行の過ごし方となっている。

1998年10月

VIC FAN CLUB  連絡先:kumi@sgy2.com