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はじめよう、おべんとう生活。 (生活シリーズ)

私の本箱 15

4月からの試練に備えて
お弁当の本

相澤せいこ

 春になりましたね。この春はちょっとばかり特別です。ムスメが中学生になります。ばたばたと準備する中でただひ凸、1月、家年明け前から少しずつ心がけてきたことがあります。もっぱらイメージトレーニングでしたが。それは「お弁当作り」です。ああ、ついに来た・・・

 小学校時代に半年ばかりお弁当生活だった事があります。「給食室の全改築で学年末までお弁当を用意してください」という校長先生の説明に頭が真っ白になった事、いまでもはっきり思い出せます。できるのだろうか、幼稚園ママのお弁当と並んで食べなきゃいけなくて、ムスメは肩身の狭い思いをする事必至だな、と始まる前も始まった後も頭をよぎりまくっていました。結果的には穴を開けることもなく、ムスメから苦情を言われる事もなく乗り切ったのですが、あれは小学3年生の時。いまより100倍幼くてかわいかった頃のこと。食べる量も多くなったし、そのくせ好みがはっきりして口も達者になっているし、今度は3年間と長期だし。こちらもスキルアップしないと。

 というわけで、当時買ったお弁当の本に加えて、やる気を喚起するため?に楽しくなりそうなお弁当作りの本を新たに入手して、チャレンジしてみようと思うものに付箋をつけたりしていました。

 1月に出会った『はじめよう、おべんとう生活。』(広沢京子・主婦と生活社)は読んでいてとても楽しかった本です。高校生の頃から自分でお弁当を作っていたという著者の、楽しんで作ってきた経験がにじみ出る内容です。「ちいさなおかず集」として、緑・赤・茶・黄・白に分けてチョコッとした副菜を見開きで紹介しているところがいいです。

 『子どものおべんとう』(祐成二葉・SSコミュニケーションズ)。これに載っていた「肉じゃが春巻き」(夕飯の残りの肉じゃがを春巻き皮に包んでオーブントースターで焼く。中心にプロセスチーズを入れるのが味のポイント。)が好評でした。基本的にこの本は幼稚園ママ向けと思われます。終わりに載っている『セサミ』誌上で募集して掲載された読者ママの自慢レシピのお弁当といったら・・・こういう文化で育った子とは、きっとどこか相容れないのだろうなあ、うちの子は。なんて製作者の意図からかけ離れた感想を抱いてしまいました。素材系の冷凍食品や缶詰などの賢い利用法なども満載でバリエーションを広げるにはよい本だと思います。

 『5分でできるカフェべんとう』(村上祥子・講談社)はタイトルの「5分でできる」に惹かれて入手しました。著者は電子レンジ料理の達人だそうで。これはきっぱりOL向けかな。週末のお昼ご飯にチャレンジしたい料理という感じです。蜂蜜やチーズの容器をお弁当箱として再利用した写真が多く、容器一覧みたいなページまである。外国の容器ってカラフルで楽しいですね。こんな風に余裕でお弁当作りを楽しめたらいいな、という憧れの詰まった1冊。「電子レンジで照り焼きチキン」は確かに簡単で、子ども達にも好評でした。予想したほど電子レンジ庫内も汚れなかったし。

 そしてやっぱりこれが基本かなーと思うのは『小林カツ代のおべんとう決まった!』(講談社)です。お弁当に必要な技術的なポイントがわかりやすく紹介されています。汁気をどうするに始まって、「いくら蓋を閉める前に見栄えがよくても勝負は開けたとき!(ソースは蓋につかないようにつける・果物は別にしないと匂いが混じる)」とか。小林さんの本にはこの「!」がよく出てきます。元気印の彼女の文章には「!」がぴったりきます。最後の方のコラムがいいのです。「寝坊してもう時間がない!というときのために、私は冷凍庫にあるものを用意していました。カレーパンとジャムパンです。油で揚げたものは短時間で解凍します。凍ったまま持たせても昼には食べられます。ジャムパンなら中心が多少しゃりっとしても気にならないし。運良く出番がなかったらおやつに食べればいいし。」これぞ実践の中から出てきた愛情スキルだと思いました。

 私がヴィクのシリーズを読むときの楽しみのひとつに、食事シーンがあります。調査中に立ち寄るデリやファーストフード系の簡単食事のシーンが好きなのです。ヴィクなりに健康を考えつつ選ぶのに、たいてい美味しく食べられなくてかわいそうなのですが。それでも何を口にするか、その時の自分の体と心の事情に合わせたものをきちんと考えているヴィクが好きです。シリーズが進むにつれ、ヴィクの選択肢はどんどんヘルシーになっていますよね。社会情勢の変化でお店が様変わりしたり、シカゴの今を感じさせてくれる部分でもあります。活動途中でもちゃんとエネルギー補給を心がけるヴィクだからこそ、タフでリアルでカッコイイ。

 お弁当は1日の活動の途中で食べるもので、後半戦に弾みをつけるための、エールのようなものだと思うのです。もちろん栄養は重視した方が良いに決まっていますが、時には爆弾おにぎり(まん丸に大きめに握ってのりで覆いつくす)でびっくりさせたり、デザートにくまのグミをつけたりして(映画『ジャック』にあった。あの映画好きです。)、楽しみつつ作って「がんばってこいよー」が伝わるお弁当にしたいなあと思っています。さて、どうなるか・・・

2006年3月

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