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からだのひみつ (新潮文庫)

私の本箱 7

からだのコトバ
田口ランディ&寺門琢己対談集『からだのひみつ』

相澤せいこ

 私は「身体のひみつ」みたいな本が子供の頃から好きでした。子供向けの身体の本はたいてい、各臓器や細胞レベルの働きを小人が作業しているみたいなイラストで説明していますよね。私はそれをすっかり信じてしまい、「体の中には小人さんが住んでいて働いている」とずっと思っていました。その後ちゃんと生物の授業も理解しましたが、結局イメージは変わってないです。心臓君も胃袋さんも毎日ご苦労さん、と声かけしたくなります。ミトコンドリアに意志があって…の『パラサイト・イヴ』も、怖い怖いと思いつつすっごいリアリティを感じて読みました。自分の意志で制御してないから、別人格のように感じるのです。変でしょうかね、自分の身体なのに。

 そうは言っても、毎日その日の調子をお伺いして活動しているわけでもないので、気がついたときにはオーバーヒート、ということはよくあります。大昔など思いっきり身体の訴えを無視して心身症にまでなったりしました。あれなんか完全に意志と身体の分離状態です。生きようとひたすらがんばる体の働きを、食べない事で一切否定できちゃいました。それで心の方はより良く生きようとしているつもりだったのだから、今思うと無茶苦茶です。あれは心が先に病んだのか身体が先に病んだのか?過食症に転じた時は反対に身体に制圧された感じでした。自分の意志なんか聞いてくれない。食べる事を止められない。強烈なアンバランスが落ち着くのに、ずいぶんかかりました。

 田口ランディ&寺門琢己対談集『からだのひみつ』(新潮文庫)を読んで、しばらく思い出すのを止めていたあの頃の事をくっきり思い返すことになりました。20代のぐちゃぐちゃも。

 「偏ってたんだよなぁ。身体と心は相互に関連しあっている。心は身体の侵食を受けて作用しているし、身体は心の侵食を受けて変化する。人間はその両方のせめぎ合いのバランスの上に成り立っているのに、身体について知らないから心が身体を司っているとばかり思っていた。身体の方が心に影響を与えてるなんてこれっぽっちも思ってなかった。だから、自分についてよくわからなくて、なんで自分がこんな風に生きにくいのかわからなくてずっと途方にくれていた。

 身体に聞いてみれば良かったんだよ。心にばかり耳を傾けないで。そうすればもっとうんと楽に生きてこれたのにな。身体って私そのものなんだ、って、もっと早く気がついてあげればよかったんだ。」(対談後の田口さんの文章より抜粋)

 この文章で、「ああそうだったなあ、でもあの頃はそれで精一杯だったんだ」としみじみ思い返せました。以前は人生の暗いシミみたいに思っていたのに。ようやく飲み込めていたんですかねえ。年取った証拠なのかな。

 田口さんは小説家、寺門さんは整体師です。二人は身体について、男と女、子育て、セックス、生と死…と縦横無尽に気持ちよく語り尽くしています。お二人の提唱する「からだの言葉を聞こう」は、みんながそうならきっと経済構造も変わっていくし、世界ももっと平和になるに違いないという大きな話につながります。

 疲れているなあと思う方、ぜひぜひ読んでみてください。心と体は決して切り離して考える事のできない、どちらも大切な自分そのもの・・・と当たり前のことをどこかに置き忘れていたことに気づかされます。

 対談集なので、気軽にどんどん読み進められます。結構あっけらかんとお二人はお話しされるので、通勤途中で読んでいて思わず赤面、周囲をうかがってしまう事もありますが…でも実はこの点にも感動していたのです。ムスメも6年生で第2次成長期に。からだの事をお互い恥ずかしがらずにポジティブに話したいと思っています。いいお手本になりました。

2005年5月

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