4 お母さんがことばを教えるとき
お母さんとこどもの間には、ことばがなくても通じ合うしぐさや、眼差し、声のラインが繋がっています。どのこどもも、お母さんにやって欲しいことは、精いっぱい自分流に伝えています。もちろん十分に伝わらない時には、こどももじれて怒ったり、泣いたりすることもあります。
ふだん自然にやっていることを、とりたてて教えようとすると、ぎこちなくなります。お母さんがことばを教えようとする時、やりすぎになってしまうのが普通です。問いつめてことばを言うまで、欲しい物を渡さないような教え方を、してしまいがちです。こどもに無理にことばを言わせないように、お母さんにお願いします。
「楽しいやり方を考えて下さいね。それが一番の近道です」
お手伝いをさせたり、一緒にお風呂に入ったり、買い物に出かけたりする時に、繰り返しことばをかけているうちに、こどもの中にことばが溜っていきます。
もう一つは、カードで教えないように、お母さんにはお願いします。絵カードでことばを教える誘惑に駆られるお母さんは少なくありません。こどもの最初のことばは、自分が味わったり、見たり、嗅いだりした物、ドキドキしながら走って通ったり、面白さに大笑いした経験を伝えるものです。ことばを覚える瞬間に、こどもの眼の前にあるのが二次元のカードだったら、カードはこどもに間違った現実を教えてしまうでしょう。
ことばの相談室では、私たちは短い限られた時間内に、たくさんの経験を用意することができないため、絵カードを使うこともあります。絵カードでことばを教えながら、お母さんとこどもには、絶えず、現実とのフィードバックをするようにお願いしています。
今日、めだかの赤ちゃんを見つけました。めだかの水瓶の隣に置いた睡蓮の瓶に、キラリ、光の矢が二本飛び交っていました。水瓶から移したほていあおいの根に生みつけられた卵が、この暑さで孵ったに違いありません。
そのことばを知っているだけで五十数年生きてきて、初めて見た「めだかの赤ちゃん」です。おとなのことばもまた、日々、更新されていく生き物なんですね。
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