3 早期発見っていいこと?
できるだけ早く、こどもの「障害」を見つけだして診断し、できるだけ早い時期に援助を始めることがこの時代の流れです。生後4ヶ月で行われる乳児健診で、首の座りが遅いと、お母さんはあわてて、健診帰りに診察を受けに来ます。最近では聴こえのチェックにひっかかった赤ちゃんを連れて聴力検査に来るお母さんもあります。どっちの場合も、1、2ヶ月待てば「何てことなかったね」で終わるのに、健診があるばっかりに、どのお母さんもみんな、子育てでドキドキすることが増えています。
ことばの遅れが1歳半健診まで見つけられないのは、良いことかもしれないと思うことがあります。ことばの遅れを、1歳前にはっきりと疑うお母さんはいませんし、乳児健診をしている医師もそれほど細かく見てはいません。誰も何にも言わないので、お母さんは赤ちゃんを、生き物としてありのままに可愛がって育てることができるからです。その時間はある程度、長い方がいいのではないかと私は思っています。
2歳を過ぎて、まわりのこどもたちが話しはじめているのに、我が子がまだ話さないと、お母さんはこどもの行動を夢中になって観察しだします。インターネットで、「自閉症」を検索にかけると、数千のサイトがひっかかってきます。すべてをダウンロードして読み続け、へとへとになったお母さんがいました。視線があわないという自閉症の特徴を読んで、我が子と何回、眼が会わなかったか、一日中、数えていた人もいます。
お母さんは生き物ですから、自分のこどもはすくすく育つのが当り前と信じて疑いません。そうではないと言われたら、驚いたり焦ったりするのは当然です。ことばの相談室に来たお母さんに泣かれてしまうことが、よくあります。
お母さんはことばの遅いこどもが、これからまっとうに生活していけるかどうかを心配しています。そして、こどもに責任はないのだけれど、ことばの遅いこどもを育てる羽目に陥った自分の境遇を嘆いています。
こんな時、私にできることは、そう多くはありません。
『悲しんで良いんだよ』と、ただ、話を聞いているだけのこともあります。
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