
梅村 浄
毎年、お正月明けにはインフルエンザにかかった子どもたちが,次々に受診して来るのですが、この冬は暖かいせいか、全くその兆しがないなあ。と、のんびり構えていました。が!新聞に近くの小学校がインフルエンザで学級閉鎖になったとの記事が載りました。
インフルエンザとどう付き合えばいいか、一緒に考えてみましょう。
インフルエンザって風邪なの?
インフルエンザは風邪の1種です。患者の咳やくしゃみで空気中にまき散らされたビールスが、鼻や咽から入って、数日たつと高熱、体の痛み、頭痛、咳、鼻水などをひき起します。他の風邪に比べると高い熱が3、4日間続きますが、自然にひいてきます。
数年前に厚生労働省の「インフルエンザは風邪ではありません」というポスターが駅などに貼ってあったのを覚えていますか?だからワクチンをうって予防しましょうという主旨でした。その辺りから、マスコミにも煽られてこどもをもつ親の間には、インフルエンザ恐怖がまきちらされていったようです。
インフルエンザは風邪です
お母さん達の中には「赤ちゃんを旅行に連れて行きたい。インフルエンザにかかったら怖いので、予防接種したい」と、受けておきさえすれば、全部の風邪にもかからない、という誤解があります。
こども診療所ではインフルエンザワクチンの接種をしていません
それはワクチンの効果がないからです。日本では1962年から学童に年2回の集団接種を始めましたが、流行を抑えることができませんでした。下の図を見て下さい。

ワクチンを沢山製造していた時にも流行はあったことがわかります。前橋市の医師会が詳しい調査を実施しています。その報告書はカンガエルーネットのサイトを見て下さい。
(http://www.kangaeroo.net/D-maebashi-F-view-no-24.html)1994年には学童への集団接種は中止され、インフルエンザワクチンは任意接種になりました。
現在では「集団感染を予防できないが、個人の抵抗力を高めるため」という説明で、ワクチン接種が勧められています。2001年には65歳以上の老人等には、再び集団接種となりました。こどもは任意接種なので、有料です。
アメリカではワクチンで超過死亡が減るという研究報告がでた後、接種率が高まり、現在65%になっています。季節によって変わる死者の数を統計的にだして、その自然の波よりも多い部分を超過死亡といいます。インフルエンザの流行があった年に,例年より老人が多く死亡した場合、インフルエンザによる超過死亡と考えます。2005年にNIH(アメリカの国立健康研究所)はインフルエンザワクチン接種率があがっても、超過死亡は減らなかったと報告しています。
インフルエンザの治療薬って効き目があるの?
タミフルという抗インフルエンザ薬があります。2002年から小児用にドライシロップが発売されました。たしかに、発病48時間以内にのむと、翌日、熱は下がります。が、タミフルはウィルスの増殖を抑えるだけなので、のまない場合に比べるといつまでもウィルスを出し続けます。
タミフルの副作用を知っていますか。タミフルをのんだ16歳以下のこどもたちが、急にわけわからずに走り回って、窓から飛び出して転落死する、睡眠中に呼吸が止まって死亡した2歳の赤ちゃん等の例が報道されました。
米食品医薬品局(FDA)は昨年11月、タミフルにつての説明文書を改訂して、異常行動に注意するように警告しました。昨年7月までに103人が異常行動やけいれんなどを起こしたと分かったからです。
うち95人は日本の患者。報告では、多くの医師が、熱がない時に異常行動が起きた、異常行動からの回復が非常に早く、インフルエンザ脳症とは考えられなかったことを挙げて、タミフルの副作用を疑っています。
たった1回、タミフルをのませたばかりに、我が子を亡くした親達が集まって、薬害タミフル脳症被害者の会を結成しています。(http://www.tamiflu89.sakura.ne.jp/index.htm)
ウィルスは薬に対抗するために、形を変えて生き延びようとします。インフルエンザウィルスが耐性化して、タミフルが効かなくなった例の報告もされています。
日本は世界のタミフル生産量の7〜8割を使用しています。誰も彼もがタミフルをのむと、耐性化を早めて、高い病原性をもったインフルエンザの発生地とならないとは言えません。
こうゆうわけで、こども診療所ではタミフルは処方していません。
例外的に、諸事情でどうしてもと言う人には処方箋を書いて、タミフルを出しています。
インフルエンザ脳症を防ぐためにはどうしたらいいの?
インフルエンザにかかったこどもたちが、その日のうちに高熱、痙攣を起こし意識不明の重体になって死亡することがあります。回復しても後遺症が残ります。6歳以下のこどもに多いので、お母さんたちは心配が募りますね。
1998年から厚生労働省のインフルエンザ脳炎・脳症研究班が研究、調査をしています。
(http://ha7.seikyou.ne.jp/home/KandN/tebiki.htm)その中で、非ステロイド系抗炎症剤であるポンタールやボルタレンを解熱剤として使うと、脳症の死亡率が上がることがわかりました。2000年にこれらの解熱剤を使うことを禁止したら、それまで30%だった脳症の死亡率は10〜19%に下がりました。
身体がウィルスや細菌とたたかうために熱をだしているのですから、むやみに熱を下げない方がいいのです。解熱剤の中でアセトアミノフェンだけはインフルエンザの時に使っても安全が確かめられていますが、必要最低限にしましょう。
インフルエンザ脳症を予防できればいいのですが、ワクチンを接種したこどもも発症しています。2003/2004年の脳症患者のうち、24%に接種歴がありました。研究班は「ワクチンの予防効果は不明」と述べています。
インフルエンザ脳症の治療は、進んできています。後遺症を残さず、助かるこどもが多くなっています。インフルエンザ発病1日目に脳症を起こすことが多いので、高熱でぐったりして、ぼんやりして反応が鈍くなったり、痙攣を起こした時は、すぐに病院に行きましょう。
じゃあインフルエンザってどうやって治すの?
インフルエンザを診療している私は、こんな方法で元気です。皆さんにも勧めます。
●インフルエンザは風邪です。
●解熱剤はアセトアミノフェンに限って、ぐったりして眠れなかったり、食べられない時だけ使います。
●咳、鼻水、痰が出る時はやわらげる薬を使います。
●元気なら、お風呂に入ります。
鳥インフルエンザは人から人へうつるの?
今年の1月11日に引きつづいて23日に宮崎県で、27日には岡山県でも高病原性鳥インフルエンザが発生しました。鶏のインフルエンザが人間に感染して、大量死をもたらすという恐怖感がまきちらされていますね。
高病原性鳥インフルエンザは、人間にもうつります。が、今のところ人から人にはうつりません。
WHO(世界保健機関)が検査で確定された患者及び死亡者の数を発表しています。
2007年1月22日現在までに、患者数は269人でそのうち亡くなった人は163人、死亡率は60.6%でした。日本では、鳥インフルエンザを発病した人はいませんが、感染した鶏に接触した人の血液を調べてみると、抗体ができている人もいました。
鶏を身近に飼う暮らしをしており、インフルエンザに罹った鶏から大量のウィルスを浴びた人が発病し、死に至っていると考えられます。患者から家族への感染が、何例か報告されています。ウィルスが変異すれば、人から人へうつり、新しいウィルスに対する抗体がない人間に大流行する可能性があります。
2007年1月時点で、流行の危険度はレベル3にあります。1から6まであり、6は世界的流行の危険度です。
どうすれば流行が防げるの?
当たり前のことですがインフルエンザが変異するのは自然現象で、人間が止めることはできません。大地震と同じく、私たちは備えをしていくことができるだけなんですね。
インフルエンザの発生を監視して、その地域に閉じ込めることが、唯一、大流行を遅らせる手段です。
ワクチンは流行した株で作り始めるので、最初の流行には間に合いません。大量に作るまで6ヵ月間かかります。
タミフルが治療に使うために、大量に備蓄されています。タミフルは48時間以内にのまないと効果がでないとされています。鳥インフルエンザの患者は、発症してかなり遅い時期にのんでいます。タミフルを使っても死亡を防げなかった実態があり、本当に効くかどうか確証はありません。また、タミフル耐性ウィルスも発見されています。
私たちに出来ることは,健康管理に気をつけて、元気な身体を保って行くことでしょう。