あたらしい歯
与田準一
ぽろりと歯がとれた。 あとにはもうべつの歯が はえかかっていた。 ぼくはねえさんの鏡をもちだしてきて それを見た。 鏡にそとの雨がうつった。
ぼくはあたらしい歯に そっとさわった。 なんとなく、くすぐったいとおもった。 おとなになる歯だなとおもった。 そしてうれしくなった。 ぼくはとれた歯をもって外へ出た。
雨はいつかやんでいた。 雲の切れめが青かった。 ぼくはふるい歯を 思いきり高く空へほうりあげた。