ちょっと待って!!
インフルエンザ予防接種の復活
今年の冬は、毎日「インフルエンザワクチンを接種していますか」と、受付の電話が鳴り響いていました。「当院ではワクチンを置いていません」と返事をしていたわけですが、電話口では、なかなか、詳しい話しができませんでした。
ところが、そうこうしているうちに、2000年1月に厚生省の公衆衛生審議会感染症部会答申がだされました。間もなく、予防接種法の改正案が国会に提出される予定です。
高齢者におけるインフルエンザ感染が死亡につながっているとして、1994年の予防接種法で廃止されたインフルエンザ予防接種をまず、高齢者を対象として復活するという内容です。こどもに対しては、今後の検討課題とされました。
この中で、インフルエンザは第2類型の対象疾患とされました。
第1類型の疾患はこれまで予防接種するように定められている百日咳、ジフテリア、破傷風、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎です。これらは集団が病気にかからないようにすることを目的としているため、個人は受けるように努力することが求められます。従って、副作用で後遺症が残ったり、死亡した時には比較的手厚い補償がされます。
これに比べて第2類型であるインフルエンザの予防接種は個人予防に比重を置くため、受けるかどうかは個人の判断に任され、接種する費用の一部自己負担も求められます。補償の程度は薬の副作用被害に対するものと同程度にとどめられました。
でも、ちょっと待って!!
マスコミの情報操作で、私たちが、なにがなんでもインフルエンザ予防接種を受けなくては、と思いこまされている現実を見つめ直してみたいと思います。ここで、こども診療所だより2号で述べたオススメしない理由をもう少し掘り下げてみましょう。
(1) インフルエンザはこどもには重症化しない病気です。
これに対しては反論があるかもしれません。インフルエンザ脳炎・脳症が小さいこどもに発生して、時には死亡し、あるいは、後遺症をのこすことが報道されています。
インフルエンザにかかると熱がでますが、インフルエンザ脳炎・脳症では、1〜2日のうちに、高熱になり、痙攣や意識障害をおこし、ひどい場合は亡くなることがあります。厚生省が1999年に全国調査を行い、1998〜1999年の1年間で217例が報告されました。(インフルエンザのウィルスが分離されたものは129例)このうち死亡したのは58例でした。また、4才以下が170例と多数を占めています。
この脳炎・脳症は日本だけに特異的なインフルエンザの合併症で、他の国ではみられません。厚生省の脳症研究班の調査では、脳炎・脳症でポンタールやボルタレンという解熱剤を使用した場合に死亡の危険性が3〜4倍になるという結果がでています。解熱剤の使用を含めて、なぜ、日本にだけ脳炎・脳症が多いのか、今後の科学的検討が必要です。
インフルエンザワクチンをうたなくてはと、必死の思いになられたお母さんたちが、あげられる理由が「脳炎・脳症になった子は、全員ワクチンをうっていなかった」という一文だったでしょう。しかし、1994年にインフルエンザワクチンは効果なしと判定されて廃止になって後、ワクチンをうけた子はいなかった現状から考えると、この文は全く根拠のないものです。ワクチン接種が脳炎・脳症を起さないというデーターは現在の所、全くありません。
(2) ワクチンをうっても十分に予防できるかどうかはっきりしていません。(他のワクチンは有効率95パーセントです)
日本では1962年から1994年までに、学童に対するインフルエンザワクチン接種を続けてきましたが、効いたかどうかの調査はあまり行われていません。唯一、前橋市医師会が1986年に発表した調査が、学問的に信頼されるものです。次のグラフを見て下さい。
ワクチンを接種している高崎、桐生、伊勢崎の3市と、中止した前橋、安中の2市のインフルエンザにかかった割合いが示されています。予防接種をしてもしなくても、インフルエンザの罹患率は変わりないことがわかります。
また、ワクチンの生産量とインフルエンザの患者数のグラフを見て下さい。予防接種が廃止された1994年から、ワクチンの生産量は激減していますが、患者数はだからといって増えているわけではありません。
今回の予防接種法の改正案では、高齢者に接種することが焦点になっています。果たして、高齢者へのインフルエンザ予防接種は、インフルエンザによる死亡を減らすことができるのでしょうか。
日本のデーターはまだ、全く不十分です。外国の論文でも、前橋市医師会の調査に匹敵するほどの、しっかりした内容の報告は、老人についてはなされていないのが現状です。しかし、入所している高齢者に90%ちかく接種した施設でも、インフルエンザの流行は抑えられず、死亡数も減っていないとする論文があります。
(3) 毎年、流行の型が変わり、それを予測してワクチンを作ります。予測が100%当たるとは限りません。新種の大流行が喧伝されていますが、今年のワクチンには含まれていない訳ですから、何の役にもたちません。
厚生省は、最近はワクチン株と流行株はほとんど一致していると言っています。しかし、インフルエンザウィルスは絶えず抗原性を変化させながら、人間の免疫をかいくぐる性質を持っています。麻疹にかかった人は、もう二度とかかることはありませんが、インフルエンザは何回でもかかるのは、そのためであると考えられています。
例えば203例のインフルエンザ症状を呈した人のうち78例からA香港型ウィルス(H3N2)が検出されました。この集団で流行が進むにつれて、HA抗原は30種類が区別されたということです。
短期間のうちにも、抗原性がこれだけ変化するのですから、たとえワクチンが、最初はあっていてもそのシーズン中にはあわなくなることも起こり得るのです。
(4) まれに予防接種の副作用で後遺症が残ることがあります。
厚生省が1997年に発表したところによると、インフルエンザ予防接種による認定被害者数(死亡したり重い神経系の後遺症を残した者)は187人です。1972年にインフルエンザワクチンは副作用の少ないスプリットワクチンになりましたが、それでもインフルエンザワクチン脳症はでているのです。
こどもに多いインフルエンザ脳炎・脳症を予防するために、乳幼児にも接種をするようになれば、さらに重い副作用がでてこないとも限りません。外国では乳幼児に接種している国は全くありません。
これまで述べてきたことから、インフルエンザ予防接種さえうてば、インフルエンザに罹らないとは断言できないことが分っていただけたでしょうか。
今後とも予防接種法案の行方を、しっかりと見守っていきたいと思います。
参考資料:
「大疑問!!インフルエンザ予防接種」 日本消費者連盟
「知りたいインフルエンザ その正体と予防接種の効きめ」 母里啓子 ちいさいおおきいブックレット11
「インフルエンザのすべて その臨床最前線」 モダンフィジシャン1998年11月号
「インフルエンザ」からだの科学 2000年1月号
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