最終更新日:2001.8.30

夏の病気 二つ

 ぼくが医者になったのはもう三十年も昔のことになりますが、その頃はこどもの伝染病の流行時期がほぼ決まっていました。例えばおたふくかぜは冬から春、溶連菌感染症は秋というふうに。しかし最近はそういう傾向も少なくなっています。とはいえ、夏には、夏特有の病気が流行ります。代表的なものを二つ紹介しましょう。

咽頭結膜熱

 最初は咽頭結膜熱です。この難しい名前をご存知でない方も、「一般的にはプール熱と呼ばれている。」といえば、あ、そうかと思い当たる場合もあるでしょう。
 咽頭はのどのこと、結膜は目の結膜ですから、咽頭結膜炎は「のどの炎症と結膜の炎症があって、熱の出る病気」ということになります。もう少し具体的に病気の経過をお話しましょう。
 普通、突然「のどが病み(痛み?)、ふしぶしが痛くなり、目も少々痛み、高熱が出る」という形で発病します。目は充血し、目やにが出ることもありますが、痛みはさほど強くなく、「まぶしい」ということもありません。結膜炎としては比較的軽いといえます。結膜炎は片側に始まり、二、三日後に反対側にも起こります。
 半数の人は三十九度以上の高熱になり、残り半分の人も三十八度位にはなります。
 頭痛、だるさ、食欲不振なども起こり、幼いこどもの場合は嘔吐や下痢を伴うこともあります。
 この病気の場合、発熱期間が長くなるので注意して下さい。ぼくなど、日頃「普通の風邪では一旦熱が出ると三日ぐらいは続く。」と言っているのですが、これを「三日すれば下がる」と聞き間違えている人もいて、そういう人は熱が五日も続いたりするとオロオロしてしまうようです。そして、「肺炎では?」「髄膜炎では?」と思いつく限りの重病の名前を挙げ、更に「最近は結核も流行っていると云うから、もしや結核では?」などと想像を膨らませます。しかし咽頭結膜熱では、ふつう高熱が四日ぐらい続いて、その後二日くらいでゆっくり下がります。一割のこどもでは高熱が一週間以上も続くのです。
 この病気はアデノウイルスというウイルスによって起こり、ウイルスの病気のほとんどには治す薬が無いので、「早く熱を下げて欲しい。」と言われても、その期待には応えられません。水分を十分とって身体を休めて、熱のおさまる日を我慢して待つということしかないのです。

へルパンギーナ

 次はヘルパンギーナです。
 この病気も突然の発熱で始まることが多く、のどの痛み、食欲低下、よだれ、鼻水、頭痛などの症状を伴います。
 この病気の特徴は、こどもに口を開けさせて のどを覗いてみると、ちょうど突き当たりの部分、つまりのどちんこの上の方に横にブツブツした口内炎が並んでいるということです。
 この口内炎は、赤く縁取られた水疱(小さな水ぶくれ)といった感じのものです。口内炎は五ヶくらいあることが多いのですが、十四ヶ以上もできることもあるし、逆に一〜二ヶ程度しかできないこともあります。この場所以外に口のあちこちにも口内炎ができることもあります。
 発熱、のどの痛みは三日間から六日間ぐらい続くのがふつうです。
 この病気もコックサッキーウイルス、エコーウイルスといったウイルスによって起こり、従って良い治療法がありません。水分を十分とって身体を休め、自然に治るのを待つことです。咽頭結膜熱の場合と同じですね。
ヘルパンギーナの場合もかかったこどもの四割ぐらいに嘔吐や下痢が見られる、ということも知っておいて下さい。)

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