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推薦図書 13

『猫のいる日々』
大佛次郎著  徳間文庫

これは、随分古い話、古い本である。丁度、今日12月12日、小津安二郎の生誕100年にあたるらしいが、彼が活躍していた時代、彼の映画「宗方姉妹」は、原作が大佛次郎で、そんな時代50年も前の話である。

なぜ、今、ここで取り上げるかと言えば、先日偶然図書館で、この本を目にし、思わず借りてきたからなのだが、格別大佛ファンでもなく、ほとんど初めて彼の作品を読むのに、そこにはなんとも言えない思いがあったのである。

大佛次郎について知っていることといえば、「鞍馬天狗」の作者ということで、その「鞍馬天狗」も松竹や東映の時代劇、嵐寛十郎や、大友柳太郎主演の映画で見ただけであった。

それが、15年位前、ひょんなことから、大佛次郎の家を借りないかという話が来たのだ。鎌倉の雪ノ下という住所に惹かれ、私達は、早速見に行った。値段が手頃なら、鎌倉に別荘代わりに借りてもいいなと思ったのだ。それにやはり、作家の家というのも興味があった。

閑静な住宅地の中、鶴岡八幡宮からも海からもさ程遠くないその家は、昔ながらの塀に囲まれた一戸建ての日本建築に洋館を足したものだった。かなり古く、傷んではいるが、お茶室などもあり、庭も荒れてはいるが、素敵である。建て増した中二階が洋館風の書斎になっている。

借りられる条件というのは、すでにその洋館の方、外国人が借りているので、残りの和室のある1階ということで、部屋以外はすべてシェアになるということだった。和室に入って驚いた。襖は破れ、障子に穴が開き、桟はぼろぼろ、すべてに猫の爪あとが凄い。

おびただしいその様子は、一匹や二匹ではないことを窺がわせる。もう、私たちはうれしくなってしまった。彼がそんなに猫を飼っていたなんて、そんなに猫好きだったなんて、全然知らなかった。当時私たちも20から30匹、常時猫を飼っていたのだから、同志を見つけた思いである。

そのころは、彼が亡くなって15年位後だったのかもしれない。記念館が横浜に建てられ、いろいろな遺品はそちらに移されたそうだが、たくさんの猫の消息は分からなかった。

家賃は、いくらだったか忘れたが、少し無理をすれば借りられた位だったと思うが、シェアする人に気に入ってもらえなかったらしく、鎌倉に住むという夢は消えた。なぜ、気に入られなかったかというと、その外国人は、ゲイで、夫婦ものではない方が良いとのことだった。

と、いうようないきさつで、思いがけず見学できた大佛次郎の家、この本を読んで、彼がどういう風に、猫たちとその家に住んでいたかが良く分かった。通算500匹の猫を飼ったという猫好き、人柄が偲ばれる。内田百けんの『ノラや』も大好きな本だが、久しぶりに楽しい猫本だった。

(2003年12月12日)

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