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推薦図書 8

幸せな長寿社会のヒントを探しに
長逗留してみたい不思議な島
大往生の島
佐野 眞一著 文芸春秋社刊
大ベストセラーになった永六輔の『大往生』のヒントになったかも知れぬという、日本一の高齢化率の島、瀬戸内海に浮かぶ山口県の島、周防大島。その島に日本の将来、少子高齢化を見据えて、いろいろな角度からヒントを探すべく何度も訪れるルポが、非常に興味深い。
今から5年ほど前に発行されたこの本に、偶然出会い、さほど興味も持たぬまま読み進んだのだが、私の知らない世界がページを追うごとに、目を開かされる思いで現れてくる。東京生まれで東京育ちの私にとって、日本といえば東京、島といえば伊豆七島で、つい最近まで、日本に6000もの島があるという認識さえなかった。瀬戸内海をヨットで旅し、長崎の九十九島も通り、小笠原諸島まで行ったのに、そんな島の1つ1つに思いを馳せたこともなかった。
この本を読むと、学校で習わない庶民の歴史に目を見張り、そこから続いている小さな村落の現在が、本当に不思議の国の思いで感嘆せずにいられない。高齢化率71パーセントという沖家室島の老人中心の社会、80歳は、まだまだ現役、90歳でも自活し、子供の世話にならず、呆けず寝込まない。畑を作り、魚を釣り、月収3万円でも貯金ができるという老人たち。東京近郊での有料老人ホームでは、全ての費用を1ヶ月にならせば、夫婦二人で50万円以上かかる計算で、その対比も唸ってしまうのだが。都会生活が長く、故郷も持たない者にとって、プライバシーの持てない小さな村に、その身を置くことなどとても考えられないことではあるが、なぜか理想郷を感じてしまう懐かしさとあこがれがあることも確かである。
地方行政の末端、忘れられたような島の、上から与えられるのではない、相互扶助のあり方は、長い歴史の上に培われた人間の知恵で、そこに住むお年寄りの本音の善良さは、戦後生まれの日本人からは、もはや見つけ出すのが困難になってしまった生きていることへの感謝の念から出てくるのだろう。
私(船長)の感想。
子供の頃、怖い映画を観た。しばらく何度も何度も夢に出てきた。この本にその記述があった。昭和三十三年に公開された『怒りの孤島』である。私は十一歳だったわけだ。「周防大島では古くから伊予(四国)の山間部の貧しい村から子供をもらってきて、その子に船を漕がせる風習がみられた。たいていは七、八歳の子供たちだった。」その子供たちを船のエンジン代わりに使っていたわけである。「映画は戦後民主主義一色に塗り込められた世相に迎合するように、前近代的風習を激しく攻撃したものだった。」貧しい者が、さらに弱い者を搾取するストーリーだった。しかし、実際は家族同様に暮らし、その過程で技術を身に付け「十五歳になると、この島の若者組に入ることもできたし、好きな娘のところへ夜這いに行っても文句を言う者もいなかった。」二十歳になると故郷へ帰っていった。私はひどく誤解をしていたようだ。助け合いのシステムが機能していたわけである。
もう一つ感心した話が出ていた。周防大島近くのある孤島では、藩幕時代まで、没落した家族が逃げ込み租税を免れ、再起できるように、その存在を役人には知らせなかったという。
この本の作者、佐野眞一氏は周防大島出身の民族学者宮本常一の取材でこの島と出会っている。上記の二つのエピソードも民族学的視点で捕らえると、その地域にもっとも適合したシステムが、自然発生的にできることの合理性や力強さが自治体主導のシステムより輝いて見えるものだと思った。
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