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推薦図書 7

散骨・葬儀とはかかわりは有りませんが
私も行ってみたい、パタゴニアへの旅への誘い。

パタゴニア・エキスプレス

ルイス・セプルベダ著 安藤哲行―訳 国書刊行会

写真=素晴らしい死を迎えるために ある日、『荒ぶる海、荒天の海に散骨してください。』と依頼が来そうな予感を、感じつつ読み進んだ、心躍った一冊の本を紹介したい。
 南米チリの作家である。「恋愛小説を読む老人」、「感傷的な殺し屋の日記」、八歳から八十八歳までの若者のための小説「カモメに飛ぶことを教えた猫」、ここまで書くと皆さんの中には、この作家を思い当たる人もいると思う。私(船長)の二歳年下のこの作家は、チリの田舎町に生まれ、スペイン内戦からの亡命者、元アナアキストの祖父に育てられ、祖父の薦めで「鋼鉄はいかに鍛えられたか」を読むにいたり、ピノチェト軍事政権時代を含めて、この劇的な自伝的旅行記?が始まる。私はこの旅行記を読みながら、澁澤龍彦の「高丘親王航海記」の印象から逃れられなかった。ガルシア・マルケスを出すまでもなく南米は、幻想文学の宝庫、はたまた「健康的なホラふき達」の大陸なのでしょうか。
 マゼラン海峡に代表される、アルゼンチンとチリにまたがる氷河と、草原と、フィヨルドと強風吹き荒れる「パタゴニア」で作家は、多くの「驚べき人々」との出会いを、淡々と「旅すると言うよりは、日々の生活」の一部として語りはじめる。
 中南米を征服したスペイン・ポルトガルの末裔たちが、自らの家系を守るため「種馬」を探しまわるドタバタ劇に巻き込まれる話。反乱で船長を殺し「パタゴニアを彷徨える船員たち」になってしまった者達(生きていれば百歳を越えているであろう)に、恩赦を伝えるべく動力も無いヨットで、氷河のフィヨルドを巡り彼らを探す老船乗りのはなし。「星の王子様」の作家のように、オンボロ飛行機の郵便配達パイロットから、世界初の「南極飛行葬儀社」となった、空軍を追放されたマルキストの酔っ払い男の話。1988年に「オゾンホール」の発生を予言し、その八年後、事態の重要性に気づいた「NASA」が慌てて探しまくった謎のアルゼンチンの学者は、第二次大戦後、ユーゴーの元ナチ残党狩りのチトーから逃れ南米に渡り、大学に職を得るもイスラエルの「モサド」追跡を恐れパタゴニアへ潜伏する。「いつか皆、盲目になる」と預言した老人は、友の冷蔵庫の修理を完成出来なかった許しを請いつつ死んだ話、等々。この他、この本にはワインや料理や、娼婦たちの話もいっぱい詰まっている。
 この作家は「如何に」、「どこで鍛えられた」のだろうか。1970年末から942日間、ピノチェトにより刑務所に送られる。この時、この刑務所に収監されていた学識豊かな捕虜、全国から集められた反体制的な教授たちにより、「テムーコ学芸協会大ホール」が刑務所内の靴工場の中に密かに結成され、多くのセミナーが開かれた、捕虜・受刑者ばかりではなく監視の兵、将校も聴講した。二週間ごとに繰り返される残酷すぎる拷問と尋問以外の時間、彼はここで充実した学生生活?を送った。出所を許された亡命者の孫は国外追放になり、亡命者となってヨーロッパを彷徨う。旅行記の最後は祖父の故郷の寒村、スペイン・アンダルシアに自らのルーツを求めたどり着くのである。「アメリカの親戚」として。

 「いま彼は、帰国を許され、自然保護活動に情熱を注いでいる。」

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